現代社会で行きぬく秘訣~古市憲寿氏と國分功一郎氏が語る『社会の抜け道』

現代社会で行きぬく秘訣~古市憲寿氏と國分功一郎氏が語る『社会の抜け道』

現代社会で行きぬくには?

現代の知を代表する28歳の社会学者と39歳の哲学者による〈僕らの生き方論〉。
あらゆる現場に二人でおもむき、見て、感じて、語り合ったからこそ出てくる「社会の抜け道」とは? 不況や政治不安、人間関係のストレス……様々なネガティブ要素を抱える現代人を魅了するサービスや商品には必ず理由があります。
本書では、今メディアで引っ張りだこの社会学者・古市憲寿氏と哲学者・國分功一郎氏が「社会の抜け道」を徹底分析。一見自由に見えながら、でも実は本当に不自由。そんな日本でも生き抜くコツはあるのでしょうか? 本書で両氏が語るキーワードは、まさに現代人が直面していることばかり。

・ IKEAやショッピングモールが人をひきつけるのはなぜなのか。
・ 現代人が心のどこかで
・ 農業にあこがれるのはなぜか。
・ なぜ人々はこれほどまでにスポーツに熱狂するのか。
・ 若者は新自由主義の被害者なのか。
・ 選挙に行っても選択肢がないと感じるのはなぜか。
・ 現代社会の仕事感、幸福感はどこにあるのか。

二人が語る言葉の中にはキーワードがいっぱい!
ワタシたちが生きている成熟した社会は、あまりにも巨大で複雑。無数の利害や、思惑が絡み合うこの社会を、急にガラッと変えることはできない。しかし、見方を変えれば社会が永遠に姿を変えないということもまた、あり得ない。
明日からどうやって生きていくのか? 複雑な社会を生き抜いていくためのヒントである「社会の抜け道」は、ワタシたちの日常、ワタシたちの暮らしの中にこそ隠れている。

現代が抱えるリアルな問題

【章編成 】
第 1 章
IKEA とコストコに行ってみた
●消費社会に肯定的は古市さんに対して、否定的な立場をとる國分さん。古市さんの「大好きな場所」として、埼玉は新三郷にある巨大家具販売店「IKEA」(本社はスウェーデン)、ショッピングモール「ららぽーと新三郷」、アメリカ資本の大型スーパーマーケット「コストコ」を巡りました。消費社会の最前線とも言える場所から見えてくるものとは……?

古市氏:「IKEA でママと子どもが唐揚げ食べてるって、IKEA は多分想定してなかったですよね。平日の昼間だっていうのに、IKEA のフードコートはほぼ満員状態でした」 「人口が減っていく地方では、コストをかけてまで流通網を維持できないかも。とすると、コストコ式の大量販売と、冷凍庫の普及は進んでいく可能性はありますね」

國分氏:「IKEA は消費者の能力が試される仕組みになっていて、楽しめる場所なんだけど、買いもののリテラシーが高くないと変なものを買わされてしまう。その原理って、新自由主義とちょっと近い感じ」 「ニトリだったら商品について説明してくれる店員のおばさんとかがいて、買う側が必要なものを選ぶのを手伝ってもらえる」

第2 章
「暮らしの実験室」の幸福論
●消費社会の最前線ともいえるショッピングモールに続いて、今度は消費社会とは真逆の、農場内で自給自足の暮らしを送る「ORGANICFARM 暮らしの実験室」(茨城・石岡市)を見学。有機野菜の栽培と養鶏などの生産・販売を行いながら生計を立てている農場の方々と”幸福”について考えました。しかし、ショッピングモール談義は止まらず…。

古市氏:「いま農場には、理論よりも実践に興味のある人たちが残っているのがおもしろいと思いました。実際に土にさわり、そこで育つ農作物を扱う農業には『リアル』がある、と」 「若者全体の意識調査でも、仕事を通じて社会貢献したいと考える人の割合はすごく多い。起業家のトレンドもこの10 年で社会貢献系にシフトしました」

國分氏:「『暮らしの実験室』の人たちがシフトダウンした人とは思えない。『静かなる異端者』だとは思うんだけど。『ダウンシフター』っていうと、銀行員や証券マンみたいな人が疲れて仕事を辞めて、農業に回帰するってイメージがあるけど、そういう人たちが農業を続けていけるのか、続けているのかもよく分からない」

第5 章
理想社会と食の問題
●国連食糧農業機関(FAO)が昆虫食を推奨する事態となった昨今、世界の食糧問題は深刻さを増しています。私たちの身近な問題として、社会と食を巡る事情を考察。また、インフォ・リッチ・フード(情報量の多い食事)提案する國分さん、栄養摂取としての食事に重点を置き、人間フードも辞さない(?)古市さんの個人的食事情にも斬り込みます。

■インフォ・リッチ・フード(情報量の多い食事)とは?
ファストフードは、含まれている情報が少ないから早く食べられる(インフォ・プア・フード)。一方、味わうに値する食事には大量の情報が含まれているため、身体で処理するのに大変な時間がかかり、その結果としてスローになる(インフォ・リッチ・フード)。
情報量が少ない料理を、いくらゆっくり食べても何の意味もない、ということになります。

古市氏:「最近、高齢者の自分探しに遭遇する機会が多い。例えばピースボートでも、若者だけではなくて、高齢者も乗船目的を『自分探し』と答えたりする。確かに学校を卒業後、企業でずっと生きてきた人たちこそ、『自分が何者なのか』というのは深刻な問題なのかもしれない」

國分氏:「おいしいかどうかというのは情報量の問題だと思う。味わうっていうのは、情報を一つひとつ受け取って、その一つひとつを無意識に判別したり、総合したりする作業。おいしい料理っていうのは情報がリッチ、つまりインフォ・リッチである、と。結果として、食べるのに時間がかかってしまう」

【本書のエッセンス】
① 徹底した現場主義!!
本書は会議室で行われたような対談ではなく、IKEA やコストコなどのショッピングモ
ールに実際に行って消費社会論を闘わせたり、若者が暮らす自給自足のコミューンに行って人々がなぜ農業に憧れるのか、そこに若者が求めている「リアル」はあるのかを語ったり、國分さんの娘さんが通っていた公立保育園に見学に行き、「8 時間保育で8 時間労働はできない」という単純なシステムの限界を知ったり…、「社会の現場」から素直に語っているのが最大の特徴です。

② プロ市民、ネトウヨ、記号消費…時代を表す言葉がいっぱい!
ネット用語や社会学用語が世の中を象徴的に表していることがよくあります。
國分さんが非常に感心した言葉が「プロ市民」。小平市の道路建設反対の住民運動に関わった際にこの言葉に出会って、大変感心したそう。いろいろな運動で必ず何度も見かける顔の人々を「プロ市民」と呼びますが、これまでの自身の社会運動経験からそういう人をたくさん見かけたといいます。

③ ブラック企業日本
みんな働き過ぎ!! 國分さんが以前に暮らしていたフランスでは、社会保障が非常に充実しているため、あまり「お金を稼ごう!」という気持ちにならないといいます。しかし、日本に帰ると、「お金しか自分を守ってくれない」という不安に包まれたとか。古市さんが留学していたノルウェーでは、生産性の上がらない労働者はどんどんクビにする。そして生産性が上がるように訓練を施すそう。
24 時間働けますか?の時代はとっくに過ぎたというのに…。

④ アップデートされた「社員旅行」「地域社会」
昔は嫌だとされていたことが、今、復活してきています。若者は絶対に嫌がった社員旅行ですが、今は、「仕事をする人とは仲良くしたほうがいいから、寝食をともにしたほうがいいんじゃないですか?」と肯定的な若者が多い、と古市さんは言います。
でも、昔のように酒の強要もなく、若者に配慮されたものになっていて、「アップデート」されています。

⑤ 少子化と専業主婦
家族制度の流動化か移民の受け入れをしている国は少子化に歯止めがかかっているとされています。しかし、日本では高度経済成長期の専業主婦家族モデルが、いまも標準家庭とされていて、女性がここまで働くようになった時代、大きなギャップを感じざるを得ません。家にはビッグベイビー(お父さん)とリトルベイビー(子ども)がいて、お母さんが
世話をする、というのはもはや昭和の幻想。男女共にフルタイムで働いて、女性だけが家事も育児も、は無理です。シングルファザー経験のある國分さんが、「保育園」とからめて、女性の労働支援や地域コミュニティの在り方などを語ります。

 

● 古市憲寿(ふるいち・のりとし)氏
1985 年東京生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程在籍。慶應義塾大学SFC研究所訪問研究員(上席)。専攻は社会学。執筆活動のみならず、マーケティングやIT
戦略立案、メディア出演など多方面で活躍。今夏、消費税増税についての有識者会議に20 代の代表として参加し、話題を呼んだ。著書に『希望難民ご一行様』(光文社新書)、『絶望の国の幸福な若者たち』『僕たちの前途』『誰も戦争を教えてくれなかった』(以上、講談社)など。

● 國分功一郎(こくぶん・こういちろう)氏
1974 年千葉県生まれ。高崎経済大学経済学部准教授。東京大学大学院総合研究科博士課程修了。博士(学術)。専攻は哲学。研究者としての活動とともに、執筆活動、メディア出演、また社会運動家としても幅広く活動。著書に『スピノザの方法』(みすず書房)、『暇と退屈の倫理学』(朝日出版社 紀伊國屋じんぶん大賞2011 受賞作)、『ドゥルーズの哲学原理』(岩波書店)、『来るべき民主主義 都道328号線問題と小平市住民投票から考える政治のこれから』(幻冬舎新書)、中沢新一氏との共著『哲学の自然』(太田出版)など。