一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.20 『マリリン・モンロー瞳の中の秘密』

50年ぶりに公開された私的な
文書を基にしたマリリン・モンローの素顔

マリリン・モンローのことを嫌いな人はおそらく、ほとんどいないのではないかと思われる。
死後50年たっても、こういうドキュメンタリー映画が作られる。好かれる理由はいろいろあるんだろうが、36歳で死んだということ。それがまた謎の死だった。
そして、映画みたいにドラマチックな36年の人生。ルックスも大きな要素だ。プロンドに垂れ目。ロケット型の奇跡的に美しい胸。小柄で適度な肉付きの絶妙なプロポーション、甘い声などなど・・・。
私は・・・私が彼女を好きなのは、彼女の「暗さ」や「脆さ」だろうか。
それから、センスの良さだろう。

本作は死後50年経って初公開された自筆のメモ、詩、手紙を基に彼女の36年の人生をたどっていく。秘蔵映像と共に有名俳優たちがマリリンの心の声や関わった人たちの声を伝えるという新手の手法が目を引く。
マリリン・モンローのことは今までもたくさんのドキュメンタリーや映画や本や写真集があり、良く知っている、思っていたのだが、本作で私は初めてマリリン・モンローという人のことを知った気がした。それほど、本作には私たちの知らなかったマリリンがいるのである。

巧みな自己プロデュースで作り上げた
セックスシンボル、マリリン・モンロー

たとえば、駆け出しの頃、彼女はフォックス映画で役をもらうために何人ものプロデューサーと寝たということ。そうして役がついていくが、有名になってからも彼女のギャラは少ないままで、フォックスとはギャラ交渉の駆け引きを巧みに重ねたこと。
若かりし頃に撮ったヌード写真を認めることでファンを増やしたこと。自己プロデュースに余念がなかったこと(特にモンローウォークなる歩き方は肉体の構造の本を読んで研究を重ねて発案したこと。この歩き方には大物女優もビックリしたそうだ)。とにかく本をたくさん読んでいたこと。いつも本の話をしていたことなど……。

愛された記憶がないと、健やかに生きるのはこんなにも難しいのか……

そして、彼女が幼い頃の話・・・・。里親を転々としていた頃に学校で描いた2枚の顔のない自画像は、暗く哀れで、私は胸が詰まって涙が流れた。絵が上手なことにも驚いたが、片一方の足の靴下をずらして下を向いた顔の絵から感じられる物凄い悲しさと淋しさ、孤独さ。
この絵だけで、マリリン・モンローのことが大半分かる気がする。
やはり幼い頃に愛されなかった子供は、成長して強烈に愛を求めるも、結局愛し方、愛され方が分からず心の底から安らぎを得ることは難しいのだな、と改めて納得。いかに、幼い頃の愛情が大切か。人は、ただ食べ物だけで生きられない、愛がなくちゃちゃんと生きていけないんだ。

本作は微細な部分までマリリン・モンローという人の素を露わにし、彼女の悲惨さにより、共感を呼び、同時に人は愛情を求めつづけるという、人間の根源的な真実まで描いているところが素晴らしい。
観た人は、彼女の悲惨に人生にほっとするのではないだろうか。

 

『マリリン・モンロー瞳の中の秘密』
10月5日(土)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー!
http://marilyn-movie.jp/
監督・脚本/リズ・ガルバス
出演/グレン・クローズ、マリサ・トメイ、ユマ・サーマン、エレン・バースティン、リンジー・ローハン、エリザベス・バンクス
(C)2012 Butterfly Media LLC

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