食を通して生き方が見えてくる~枡野俊明さん『禅と食 「生きる」を整える』

毎日の食事をどうとらえるか

文筆家として、庭園デザイナーとして多くの方から支持され、活躍の幅を世界に広げている、枡野俊明(ますの・しゅんみょう)さんの待望の新刊が発売になりました!

住職を務める建功寺の座禅会には芸能人が訪れることもあり、庭園デザイナーとしては、イギリス・マン島に住む南アフリカ人の富豪がプライベートジェットで「ぜひ禅庭をつくってほしい」と枡野さんを迎えにきたこともあるというエピソードも。
今回の新刊は、料理をつくる心構え、食事をする心と所作、シンプルな食習慣を数々のベストセラーを輩出する枡野俊明氏がやさしく説き、簡素で清々しく、美しい生き方を提案。さらに精進料理のレシピつき(朝・昼・夕それぞれの献立)で、まさに今日から禅的食生活を実践できる、とっておきの内容です。
食事をつくること、食べること。一回一回の食事を丁寧に大切にすることは、一瞬一瞬の人生を、心を尽くして生きることに通じます。禅的シンプル生活のはじめの一歩は「食事」から!そんなことを実感できる珠玉の一冊。

枡野俊明さんは、著書『禅が教えてくれる美しい人をつくる「所作」の基本』(幻冬舎)が23 万部超を売り上げ、『怒らない禅の作法』(河出書房新社)や、『禅、シンプル生活のすすめ』(三笠書房)などその他の著書も軒並み重版を重ねている、人気の曹洞宗僧侶です。
本書のテーマは、枡野さんがいま、最も関心をもっている「禅と食」。そもそも禅宗の祖・道元は、若い時分、宋の典座(てんぞ、いわゆる炊事係)に禅の本質を教わったという経緯をもち、それを『典座教訓(てんぞきょうくん)』 『赴粥飯法(ふしゅくはんぽう)』という本にまとめています。それらのエッセンスを枡野さん流に解釈してもらいます。「食」を通して、日常に「禅」の教えを取り入れることができると説きます。

本書の中身を少し紹介!

 

「孤欠個固(コケコッコ)」の「孤」は、「孤食」のこと。「孤食」はひとりで食べること。「欠」は、「欠食」のことで、食事を抜くことです。「個」は、「個食」のことで、同じ食卓を囲んでいてもそれぞれが違うものを食べること。「固」は、「固食」のことで、いつも固定メニュー、つまり同じものばかり食べることです。この言葉は子どもの食傾向に警鐘を鳴らすために生まれた言葉ですが、枡野さんも危惧しています。飾らない自分でいられる「家庭」という場所を大きな役割を果たすのが「食」であると。ですから、桝野さんご自身も、みんなで食卓を囲むことを実践されています。

 

最終章では、静岡県袋井市の可睡斎・典座和尚である小金山泰玄の監修の元、実際の精進料理のレシピ(家で作れる朝食・昼食・夕食)を紹介し、実践に役立つ一冊としています。特に枡野さんは朝がゆを勧めています。「病人食」のイメージを払拭し、「健康食」と認識してほしいと。胃腸にやさしく、強い味付けではないので味覚も敏感になり、修行僧は半年もするとみんなお粥が大好きになるそう。いまは炊飯器で簡単につくれるので、さつまいもや小豆を入れたりしてもいいので、ぜひ実践なさってください。

 

枡野さん自身も、家族(妻とお子さんが二人)で必ず食事をとるということを大切にしており、また腹八分目に抑えること、規則正しく食事をとることを大切にしています。何よりも「朝の時間」を大切にしており、毎朝4 時30 分頃に起きて、お寺の掃除を行い一杯のお茶を飲む、6 時から住職としての勤めを行い、7時に朝食、7 時30 分からメールの返信など仕事を行い、9 時からは来訪者の対応…という流れになっています。ちなみに昼食は12 時、夜は19 時と食事の時間を決めています。

 

七分、八分のほろよい状態が、自分も楽しくなり、周囲にも迷惑をかけないで「美しく」飲む姿勢を保つデッドライン。そこでとどめておけるかどうかで、愛すべき左党でいられるか否かが決まります。

 

睡眠時に消化器官を休ませるには、寝る 2時間前になったら食べものを口にしないのが望ましいのです。そうは言っても、すでにそれが習慣になっている人は、すぐにやめられないでしょう。禅には「制中(せいちゅう)」という一切の外出禁止、修行に励むという100 日間の修行があります。不思議なもので100 日間続けていると、到底、耐えられないと感じた修行もこなせるようになります。同じことですね。

 

曹洞宗大本山永平寺の貫主の宮崎老師は、「ものを置いても、ちぐはぐに置くのと、まっすぐに置くのと、すべて心があらわれておるんだから、心がまっすぐであったら、すべてのものを、まっすぐにする必要がある」とおっしゃられています。ルールを守って捨てる必要がありますね。

 

他にも、こんなユニークな教えが満載!

●嫌いなもの、食べられないものには手をつけない
●食欲が出ないとき、どうする?
●間食はストレスを満たすもの?
●洗い物はその日のうちに
●ひとつ”贅沢”な器、箸を取り入れる
●週に一度、野菜断食を
●考えている以上に見られている、あなたの箸使い
●ファストフード、レトルト食品は好きですか?

 

枡野俊明(ますの・しゅんみょう)さん
1953 年神奈川生まれ。曹洞宗徳雄山建功寺住職、庭園デザイナー、多摩美術大学環境デザイン学科教授。玉川大学農学部卒業後、大本山總持寺で修行。禅の庭の創作活動により、国内外から高い評価を得る。芸術選奨文部大臣新人賞を庭園デザイナーとして初受賞。ドイツ連邦共和国功労勲章功労十字小綬章を受章。2006 年「ニューズウィーク」日本版にて、「世界が尊敬する日本人100 人」に選ばれる。庭園デザイナーとしての主な作品に、カナダ大使館、セルリアンタワー東急ホテル日本庭園など。主な著書に、『禅が教えてくれる美しい人をつくる「所作」の基本』(幻冬舎)、『怒らない禅の作法』(河出書房新社)、『禅、シンプル生活のすすめ』(三笠書房)などがある。

 

『禅と食 「生きる」を整える』
枡野俊明著
小学館
1,470円(税込)