一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.19 『ウォーム・ボディーズ』

一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.19 『ウォーム・ボディーズ』

ゾンビ青年と人間の女の子~異色な恋の物語は意外な感動を呼ぶ

ゾンビ映画である。ゾンビ映画と吸血鬼映画とホラー映画が苦手な私である。だから何も情報を入れず試写室に座って始まってえらく後悔した。
ああ~どうしたもんだ……と最初のゾンビ映画全開の「ガルルッ」シーンはほぼ下を向いていた次第。ハンサムボーイ、ニコラス・ホルトに惹かれてやってきたが、まいったなぁ。と、薄目で映画を見ていた。
すると、ゾンビとして生きる(?)青年が、ゾンビを退治する軍に所属する人間の少女と出会うあたりから様子が違ってくる。少女の恋人の脳を食べたために、少女にひと目惚れしてしまった青年ゾンビ。彼は少女を自分の住まいであるボーイング747へと連れていく。最初は怖がっていた少女だが、だんだんと青年の優しさと純粋さに打ち解けていく……。

粋な選曲で綴られる数々の音楽にうっとり!

ゾンビが生者の女の子に恋をする。結果、生まれ変わる(?)って、ちょっと今までにない展開で、途中から俄然乗り出してしまった次第。
「ガルルッ」シーンもほぼなくなり、青年と少女の心が接近していく過程ではボブ・ディランやジミー・クリフ、ブルース・スプリングスティーンなど粋な選曲の名曲が次々と流れる。音楽のセンスが超イケテる!ああ、なんていい詩なんだろう、と映像と訳詞を見ながら音楽を聴けるって映画のいいところだよね、と思いながら名曲にうっとり。

ゾンビが思い出す人と手をつなぐ心地良さとは?
人間である私たちに絶対必要なもの

この話は青年だけじゃなくて、青年のゾンビ仲間も変わっていくというところがすごく良い。青年の友人のおじさんゾンビが、人間の男女が手をつないだポスターを不思議そうに見て、そのうち何かを思い出して涙ぐむシーンがあるのだが、私はそこで涙が流れた。おじさんもそこから青年の恋を応援するようになる。
人の手の温かさ、人と手をつなぐということ。それは、とても安心させられる行為だ。つないだ手は人間だったら当然温かい。人は手からパワーをもらいあっている。どんな重病人も看護師さんや家族に手を握ってもらうだけで、痛みが和らぐそうである。
生身の人肌の温かさというのは、人間である私たちには絶対に必要なものである。そういうことを確信できる繊細なシーンだった。

ゾンビというのは、言わば人間の心を失った化け物みたいなものだが、その彼らが人間を助け、人間の「温かさ」を思い出す、そして変わっていく……こういうパターンの物語に私は物凄く弱い。たとえば「ソルジャー」とか「リベリオン」とか「アイ・ロボット」とか「善き人のためのソナタ」とか。たぶん、大抵の人は弱いのではないかと思う。

映画は最後まで観ないとほんとわかんないもんである。
タイトルは「温かい体」だよね。温かい体に餓えてるのかも……とふと我が身をふりかえってしまった、キュートな感動ゾンビ映画であった。

『ウォーム・ボディーズ』
http://dead-but-cute.asmik-ace.co.jp/
2013年9月21日(土)大阪ステーションシティシネマ他全国ロードショー中!
監督・脚本/ジョナサン・レヴィン
原作/アイザック・マリオン
出演/ニコラス・ホルト、テリーサ・パーマー、ロブ・コードリー、デイブ・フランコ、ジョン・マルコヴィッチ
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