“永遠のセックスシンボル”マリリン・モンロー 謎の死を遂げた彼女の真実とは-。『マリリン・モンロー 瞳の中の秘密』

マリリン・モンローの生き方の真実

世紀の女優マリリン・モンローはハリウッドと自分自身で作り上げた”虚像”だった―。
秘蔵映像と、没後50年で初公開された自筆の文書から、ただ真摯に生きた一人の女性像が浮かび上がる。プライベートな部分をごく身近な人にしか見せないことで表向きのパーソナリティを作りだしたマリリン・モンローは、1962年に36歳の若さで突然この世を去る。死後50年経った今も彼女と彼女の出演作は私たちの中で輝き続けているが、その存在や真実は謎に包まれたまま。

本作は、秘蔵映像と初公開された自筆のメモや日記、私的な文書を基に彼女の生い立ちから最期までを丁寧にたどってゆく。そして、ユマ・サーマン、リンジー・ローハン、グレン・クローズ、マリサ・トメイら年齢も立場も違う現役女優達が、彼女の残した言葉を朗読、ときにはマリリン・モンロー自身となり、彼女の声を、真実の姿をよみがえらせていく―。

“having a sense of myself.“(自分がマリリンだって意識する事)
“alone!!!!!! I am alone. I am always alone.”(独りぼっち!!!!!! 私は独りぼっち。いつでも独りぼっち。)
モンローは、時には感傷的で詩的な文章で、時にはユーモアを交えたイラスト入りの手紙で、時には料理のレシピや“これからやることリスト”まで…自己や他人に対して思うがままに綴っている。最期まで公には見せなかった情熱、野心、自分探し、権力への恐れ……。そこには、当代きっての大女優というイメージとは程遠い、生身の女性としてのマリリン・モンローが映し出される。

■リズ・ガルバス監督 インタビュー
私はもともとマリリン・モンローの熱狂的なファンではなかったの。彼女のことは一人の女優や女性としてより、写真の中のアイコンだったり、伝説的人物と捉えていた。自分の人生とは全くかけ離れていると思っていた。そうでしょ?彼女は1950年代のハリウッドの経済システムの中で、並外れて卓越したカメラとの相性をもち、スターダムを登りつめたスターよ。かたや私は、ただの映画製作者で2人の子を持つ母親。仕事と2人の子供のバランスを取ることが永遠のライフ・ワークなんだもの。

2010年、ボビー・フィッシャーのドキュメンタリー映画で製作を担当してくれたスタンリー・バックサル から、彼が編集中の本の話を聞いたの。それはマリリン・モンローが残した手紙、詩、メモなど未公開文書を集めた本(「マリリン・モンロー 魂のかけら」青幻舎刊)。ドキュメンタリー映画の製作者じゃなくても、セレブの“未公開”ものは気になるでしょ。中を読むと、やることリストやレシピメモからビジネス・レターや書きなぐりの詩…。どんどん深く掘り下げていくにつれ、彼女の恋人や友達へ宛てた文章はもちろん、何よりも彼女から彼女自身への訓戒に釘付けになったの。

そこには誰も知らないマリリンがいた。そしてそれは彼女自身が捉えた1人の女性だった。その 紙切れには、20世紀の文化人で最も影響力のある人物の、知られざる歴史が隠されていたわ。彼女の私的で、繊細で、深く心を動かす文章は彼女に対する私の理解を変えた。それは驚きであり、感動的な体験だったの。
何よりも、彼女を理解していくことが自分自身を発見する旅にもなった。彼女の文章を読むことで、この女性に対する私の独断的な見方、それを彩った性的偏見、そしてそれをかたどった純朴さに気付いた。そして、マリリンは少なくとも、私たちと変わらない共感できる存在だったという事がわかったの。

彼女はプリマドンナで、すぐに不倫をして、力ある男たちの女で、気まぐれ屋という表向きのイメージがあった。けど、その裏側には、仕事と家庭の両立に悩む妻であり、キャリアをつかむためにセックス・アピールを利用する(ただそれを恥ずかしがらずにやってのけた)女優でもあり、自分の演技を磨くために休むことなく学び続ける役者であり、自分の利益のためにスタジオのシステムを操る手腕を持ったビジネスウーマンであり、誠実かつ寛大な友人のような存在だったの。すべてを通すと1人の人間として称賛すべき資質が見えてきたわ。

マリリン・モンローについては既に映画、絵画、伝記、小説、写真、テレビといったほとんどのメディアで多くが語られていて、どうすれば私が体験したマリリン再発見の旅を観客にも体験させることができるかが課題だった。そこで、私でさえマリリン神話の裏に隠された部分に共感できたのだから、ハリウッドで活躍する女優たちはよりこの題材に強いつながりを感じることができる気がしたの。彼女たちの個人的な解釈で、マリリン自身の色々な面に命を吹き込んでくれるはず、と。

マリリンの“やることリスト”を見て、「女優はみんな同じようなリストを作ってるわ!」とユマ・サーマンが言ってたわ。マリリンと知り合いで一緒に仕事をしたこともあるエレン・バースティンからマリリンのイメージにファッション面で影響されているリンジー・ローハンや、マリリンのことを深く考えたことがなかったグレン・クローズやヴィオラ・デイヴィスまで、私は現代のこの女性たちとマリリンの間に深い共通点を目の当たりにした。それぞれの女優がマリリンの異なる要素に重なっていた。だから彼女たちが本を読む間、私はそのイメージを彼女たちから引き出したかった。

このマリリンに関する新しい素材に命を吹き込みたかったの。これまでに嫌気がさすほど語り尽くされた、おそらく真相は闇に包まれたままのスキャンダルと同じものにはしたくなかった。
私たちみんなが知っているマリリンへの理解を変える要素を本から取り出したかった。トルーマン・カポーティ、ナターシャ・ライテス、エリア・カザン、リー・ストラスバーグのように彼女と交流のあった人から、ノーマン・メイラー(「マリリン その実像と死」73年、継書房刊)」、グロリア・スタイネム(「マリリン」87年、草思社刊)のように本人と一度も会ったことはないけど、彼女のイメージを作り上げるのに貢献した人までね。

つまるところ、この作品はマリリンからマリリンへのラブレターよ。この映画を観た人に、彼女をファンタジーの対象ではなく、一人の人間として捉えてもらいたい。ノーマン・メイラーが“性の天使”と捉え、グロリア・スタイネムが“愛想の良い半分人間(半分女神)”と捉えたように、彼らと同じ作家として私はただ彼女の中に恋人と仕事人のプロとしての葛藤を見つけたかっただけなのかもしれない。でも、何よりマリリン自身が彼女の人生をかけてやりたかったこと、等身大の女性としての彼女を表現したいと思ったの。

10月5日(土)より新宿ピカデリーほか順次全国ロードショー
配給:ショウゲート
(c)2012 Diamond Girl Production LLC – All Rights Reserved
監督:リズ・ガルバス
出演:マリリン・モンロー
ユマ・サーマン/グレン・クローズ/マリサ・トメイ/リンジー・ローハン/エイドリアン・ブロディ/エレン・バースティン/ベン・フォスター/ポール・ジアマッティ
2013/アメリカ・フランス/英語/ビスタ/5.1ch/108分/翻訳:伊原奈津子/原題:LOVE,MARILYN

 

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