日本の食を訪ねて1~日本の田んぼを守る金寶自然酒蔵元「仁井田本家」PART.2

酒蔵にはお酒の神様がいる!

有機・自然栽培田見学後は酒蔵を見学させて頂きました。旧三春街道に面した立派な構えの門をくぐって敷地内へ。実際の酒造りは秋の実りの時期に稲刈りが終わった後になります。酒蔵の入り口には2種類の阿武隈山系の天然水を引き込んだ仕込水の水場があり、お米と同様に酒造りに大切な清らかな水が流れていました。蔵の中へ入るとまず酒の神に「このような機会を与えて下さったことに感謝し、田村有機の里が実現すること」を祈りました。

仁井田本家では自然米と天然水の原材料だけではなく、醸造所である蔵の内部にもこだわっており、太い梁や床は環境に優しい安心できる日本固有の塗料の「柿渋」を塗りこんでいます。酒蔵は有機食品加工場として有機JAS認定を受け(*有機JASは農水省管轄で厚生省管轄の酒類自体は有機JAS認定を取得できません)、自然酒造りに対するこだわりは相当なものであることが伺えました。
自然酒造りの工程は、精米・洗米浸漬・蒸米・放冷・製麹(せいきく)・酛(もと)仕込み・本仕込み・槽掛(ふなかけ)・火入れ・熟成・唎酒(ききざけ)・瓶詰めで自然酒の出来上がりとなります。床や梁に柿渋を塗った仕込み蔵や熟成蔵は落ち着いた雰囲気で趣がありました。
また、酒蔵ではエコシステムを取り入れ、洗米排水は最新頴鋭の排水浄化処理施設で浄化しています。酒瓶もそのまま使用できるリターナル瓶使用率約95%と環境にもかなり配慮した醸造元でした。

日本酒は原材料のお米で味が変わってきます。今年、全国新酒鑑評会で金賞を受賞した「穏 純米大吟醸」は大吟醸酒を造るにはぎりぎりの50%で精米したお米で造られた自然酒です。なるべくお米の栄養価の高い部分を残し、無農薬・無化学肥料で栽培された自然酒が健康に良い飲み物といわれる所以はこのあたりにあると思います。また自社田の自然米で古代の醸造法で造られた辛口の特別純米酒「田村」は「古里田村の会」加盟酒販店のみで販売しており日本酒好きの間で「幻の酒」と云われ、TVでも放映され話題になりました。

江戸中期から続く金寶自然酒蔵元は、廃業を余儀なくされる造り酒屋も多い中にあって300年も続いてきたのは、酒蔵は仁井田家だけのものではなく、「仁井田家が預からせて守らせて頂いている」という先代から代々受け継がれてきた蔵元の謙虚さが理由の一つであると思いました。
酒を造るという事は酒蔵のある地域の稲作農家さんご家族の命を預かるということでもあり、また自然酒を造るという事は酒蔵周辺地域の自然環境を守るという事でもあります。その使命感のようなものが300年も素晴らしい酒を造り続け、仁井田本家の自然酒が金賞を受賞した所以であるというのは紛れもない事実であると感じました(*風評被害にもめげず、今年福島県は新酒鑑評会金賞26点と全国一の酒どころとなりました)。

幻の酒と云われる「田村」
*仁井田本家では自然酒の他に、麹・有機米・自然水が原材料の植物性乳酸菌飲料マイグルトも販売しています。マイグルトをご購入頂くとフクシママイグルト基金として売り上げの一部が復興支援に寄付されます。
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