『ルーンマスター杉原梨江子　～北欧の聖なる文字ルーンからの伝言～』　第2回

ルーン文字の魔法を伝える女神

今日はルーン文字の魔法に長けた北欧の女神さまについてお話ししたいと思います。北欧の女神といえば、愛と豊穣の女神[フレイヤ]が有名ですね。古来、魔術に長け、恋の願いを叶える女神として崇拝されていましたが、“ルーン文字の魔法”に精通した女神と考えると、美しい女性戦士、[シグルドリーヴァ]です。北欧神話ではヴァルキューレの一人とされている、とても神秘的な魅力をもった女性です。運命の出会いをした男性に、ルーン文字の魔法を伝えて、不幸を呼ばないように助言する様子が細かく描かれています。その男性の名前は英雄シグルズ。ドイツ語名で“ジ―クフリード”といったほうがわかるかもしれませんね。今年生誕200年を迎える作曲家ワーグナーのオペラ『ニーベルンゲンの指環』にも登場する女性です。

女性戦士ヴァルキューレとは？

北欧神話に登場する女性戦士「ヴァルキューレ」。最高神オーディンの命を受けて、戦場で死んだ者の魂を宮殿ヴァルハラに連れていく役目を担っているのが彼女たち。最近、「ヴァルキリ―・プロファイル」というゲームが流行っていますが、ご存知ですか？　そのヴァルキリ―の一人が[シグルドリーヴァ]と考えてください。死者を集めるというロールプレイングゲームはまさに北欧神話のエピソードそのもの！　私もぜひやってみたいのですが、ゲームは苦手なので手が出ません。そうそう、ヴァルハラ…この言葉もCMでやたらと出てきますね。ゲーム界は北欧神話ブームのようです。

眠りから目覚め、恋に落ちて

物語は、炎に囲まれた山頂で、呪いにかけられて眠っていた[シグルドリーヴァ]を英雄シグルズ]が起こす、そしてお互いに、ひと目で恋に落ちて……というロマンチックな出会いから始まります。目覚めた[シグルドリーヴァ]は[シグルズ]の未来を予言。その不幸が的中しないように、彼女はルーン文字の魔法をいくつも[シグルズ]に教えます。二人は結婚の約束をして、別々に山を下ります。[シグルドリーヴァ]は[ブリュンヒルド]と名乗り、人間として暮らしながら、[シグルズ]との再会を夢見ます。一方、[シグルズ]は山頂での出来事を忘れて別の女性と結婚してしまい……。そこから壮大な悲劇が繰り広げられていきます。この物語を話し始めるときりがないので、今日はこのあたりでやめておきます。

愛する男性に告げたルーンの秘術とは？

[シグルドリーヴァ]は、ルーン文字をこんなふうに使いなさいと、英雄[シグルズ]にアドバイスしています。＜　＞に入るルーン文字、わかりますか？ルーンについて、多少知っている人だったら答えられるはず。
さあ、女性戦士[シグルドリーヴァ]が愛する男性のために告げたルーン文字の秘術とは？

「勝利を望むなら、勝利のルーン＜１＞を知らなければなりません。剣の柄、刃に彫り、戦いの神テュールの名前を二度唱えなさい」

「信じている女に欺かれたくなかったら、手の甲、爪にナウズのルーン＜２＞を彫りなさい」

「誰からも恨みや憎しみで返されたくなければ雄弁のルーン＜３＞を知らなければなりません」

古代の魔法を現代に生かすために

さて、あなたはいくつわかりましたか？　答えは最後にお伝えします。
[シグルドリーヴァ]はルーンのアドバイスをした最後にこのように言っています。

「邪説を避け、固く信じて自分のために使用するものにとって、すぐれた力のルーン。これを学んだら、神々が滅びるまで使いなさい」
（以上、『エッダ「シグルドリーヴァの歌」』谷口幸男訳・新潮社刊を参考に、一部抜粋・要約しました）

この台詞にはルーン文字を使うにあたって、重要なことがいくつも書かれているんですよ。

★１つめ：“邪説を避ける”こと。古代北欧では間違った使い方をする者にはルーンの意味は全く異なったものになるとされていました。時には不幸をもたらすことも……。
★2つめ：“固く信じる”こと。当時、ルーン文字を使っていた人々は引いたルーンのメッセージに忠実に従ったといわれています。今の環境や常識でかたまった自分の頭で、勝手な解釈をしないように心がけましょう。まずはインスピレーションで、その意味を正確に受けとるようにしてください。
★3つめ：“自分のために”使いなさい、と言っていることも大切なキー。自分の幸せ、自分の将来を具体的に思い描きながら、ルーンと向き合いましょう。

いかがですか？「シグルドリーヴァの歌」が書かれたのは10世紀頃といわれています。そんな古代の魔法が現代に伝わり、私たちの人生でも生かすことができるなんて、すごいことだと思いませんか？
では最後に、ルーンの秘術の回答をお伝えします。あなたはいくつ正解しましたか？

剣のルーン【Tティール】－戦いを挑む、勝負強さ／勝利する力