代替療法翻訳家・上野圭一先生インタビューPART.1「普通の医学部の学生と随分違っていたワイル博士」

Trinity vol.47でインタビューをご紹介した、翻訳家の上野圭一先生。アンドルー・ワイル博士の翻訳で知られる上野先生は、ワイル博士との親交も深く、博士の活動や素顔も教えてくださいました。TrinityWEBでは、そのお話をご紹介します。

植物少年だったワイル博士が
医学の道を志すまで

― ワイル博士はどのような方なのでしょうか。
上野:
一言で言うと、本当にバランスの取れた人だと思います。年齢は僕と1つ違いで意外と若いんですよ。と言ってももう70過ぎましたけど。
ハーバード大学の医学部出身ですが、その前にもかなりいろいろな勉強をしているんですよね。高校生の時に交換留学で来日し、全くの言葉も通じないような異文化に触れたことが大きな経験になっているそうです。
留学の期間が終わってもすぐにアメリカには帰らず、船でアジアを周って帰ったそうです。インドを経由したり中近東を通ってヨーロッパにも行って、そして大西洋から帰ったと。
いろんな国を見て、それがまたすごく良い経験になって、その後、ハーバードに入ったのですが、最初に言語学部に入学しました。というのも、日本語やアジアのいろんな言語とか、ヒンドゥー語、アラビア語など、いろんな言葉に接して彼が気づいたのは、言葉が変われば世界観が変わるということだったんですね。それは正に真理だと思うのですが、言葉が変わるとなぜ世界観を変えるのかに彼は興味を持ち、ハーバードの言語学部に入ったわけなんですよ。
さらに人間の心を知りたいと心理学、子どもの頃から好きだった植物学も深めました。彼は小さい頃から植物少年なんですよ。彼と散歩をすると、木や草の名前も効能も、聞くと全部知っているから、いろいろ教えてくれるのですごく面白いんです。歩く百科事典のような人ですよ。植物が好きで、自宅にも農園や薬草のガーデンもあるし。植物学を学び、30代に近づいてから、最後に医学部に入ったわけです。

“自分だったら、この治療は受けたくない”
という気づきが、代替療法への扉を開いた

上野:
医学を学んでも、すでにいろんな経験をしているから、普通の医学部の学生と随分違っていたわけですよね。ハーバードで習った医学は納得できないけれども、そのまま卒業して、サンフランシスコの病院で研修をした時に、“自分が同じ病気になったら、今、自分が患者に施しているような治療を受けたくない”と気づいたわけです。
それで、西洋医学以外にどんな知恵があるのだろうかと、フィールドワークを始めたんですよね。ネイティブインアメリカンのメディスンから始めて、南アメリカ、インド、アフリカへ行って、最終的にはアメリカに戻り、80年代にアメリカで初めてアリゾナの大学で代替医療の講座を開いたんですよ。
当時、医科大学で代替医療を教えることは非常に珍しくて画期的でした。
東洋の価値観と、西洋の科学的な思想はなかなか相容れませんでしたが、彼は、科学的な裏付けを持ちながら、西洋医学以外の価値のあるメソッドを無理なく取り入れることをずっと研究してきました。90年代になって、それまでの代替療法の研究が成熟して、統合医療を提唱し始めたわけです。世界でも初めてだったと思うのですが、アリゾナ大学に統合医療センターをつくって医者の教育を始めました。

~続く~

【Profile】

上野圭一先生
ホリスティック医学協会副会長・翻訳家・鍼灸師。癒しと憩いのライブラリー館長。統合医療の第一人者アンドルー・ワイル博士のベストセラー『癒す心・治る力』を始め、さまざまな代替療法書籍の翻訳を手がける。
http://www.libraryhr.org/

<information>
上野先生が館長を務める「癒しと憩いのライブラリー」が、7/27(土)より伊東サザンクロスリゾート内でオープンします!
現在、蔵書寄贈を募集中。詳しくはコチラ>http://www.libraryhr.org/go-ji-zengnoo-yuani
「癒しと憩いのライブラリー」 http://www.libraryhr.org/
場所:静岡県伊東市吉田1006 サザンクロスリゾート内

オープン日には、「癒しと憩いのフェス2013」を同時開催。上野先生の講演のほか、帯津良一先生の講演や、ヨガやヒプノセラピー、WATSU(ワッツ)などの体験型ワークもあります。
癒しと憩いのフェス2013」
日程:7月27日(土)~28日(日)
http://iyashi-ikoi.org/
Photo: Mitsuyoshi Ryo