「老化卵子と無精子症」セントマザー産婦人科医院院長・田中温先生PART.4

35歳以上の女性に深刻な卵子の老化
「老化卵子」を若返らせる研究

昨今、講演後の無料相談会や私の病院に来られる方から多く寄せられる質問は、圧倒的に「老化卵子」と「無精子症」の2つです。

老化卵子は、女性の晩婚化が進んだ現在、妊娠を考える時に避けて通れない問題です。女性の年齢が40歳以上の場合、妊娠率は大幅に下がるのですが、その主な原因が、老化卵子と考えられています。女性の卵子は出生時にすでに数十万個存在するので、年齢と同じだけ歳をとり、その質が低下するためです。

まず、老化卵子については、加齢により硬くなった透明帯と呼ばれる卵の殻を一部カットして孵化しやすくする「アシステッドハッチング」といった技術をはじめ、子宮ではなく卵管内に移植する「ギフト法」や「ジフト法」など、高齢女性に有効な治療が行われています。

また、私の病院では現在、老化卵子を若返らせる研究を続けています。加齢に伴う卵子の質の低下は避けることができませんが、老化した卵子から細胞質を取り除き、これを徐核した若い卵子の細胞質に入れることで、卵子の質を上げるのです。卵子を丸ごと提供する卵子提供と異なり、細胞質という目玉焼きで言えば白身の部分だけを置き換え、核は患者本人のものを残すので、自分の子どもができます。また、細胞質をもらって卵子が若くなるため、妊娠率も上がります。世界でまだ誰も成功していませんが、動物実験では、この方法により、ある程度、卵子を質の低下から救済できることが報告されています。

100人に一人の無精子症
男性不妊の最新治療

次に、男性の100人に1人といわれる無精子症については、インターネットの普及で広く知られるようになり、カップルで相談に来られる方が増えました。無精子症に対する現在の最新治療は、「円形精子細胞」による体外受精です。円形精子細胞とは、無精子症の3割近くの男性に存在する精子の前段階の細胞のことです。この細胞を精巣から取り出し、卵子に注入する顕微授精により、2012年6月、私の医院において日本で初めて出産に成功しました。これまでは男性が無精子症の場合、他人の精子でしか子どもができず、治療の対象にならなかったのが、この方法によって自分の子どもができるのです。これはすごい進歩です。

不妊治療においては、卵子提供や精子提供といったAID(非配偶者間人工授精)が現在のトピックですが、将来、子どもが大きくなって真実を知った時に精神的な打撃を受ける可能性を考慮して、私たちはできるだけAIDをしないように、ご夫婦が自分たちの細胞で子どもができるようにと日々研究を続けています。
~了~

【Profile】
セントマザー産婦人科医院院長 田中温
85年日本初のギフト法による児誕生に成功。現在は良い卵を育てる方法の検討や円形精子細胞を用いた顕微授精に力を注ぎ、日々の診療にあたっている。不妊症治療のゴールは妊娠ではなく出産であると考え、お産に関するサポート体制はもちろんのこと、アロマセラピー、漢方、遠赤外線医療など、身体に負担の少ない代替療法も多く取り入れている。

セントマザー産婦人科医院  http://www.stmother.com/

<information>
「癒しフェア2013 in TOKYO」にて、田中温先生が講演と無料相談会を開催します!
※相談会は、事前予約制です。
http://a-advice.com/tokyo_2013/guest/tanakaatsushi/

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Text:Izumi Sakauchi