「大らかに人生を楽しめると不妊治療も成功しやすい」セントマザー産婦人科医院院長・田中温先生PART.2

不妊治療を乗り越えるために
辛い時は気持ちを切り替える

不妊治療は大変つらいものです。時間もお金もかかりますし、精神的な負担も大きい。しかし、頑張って治療をすれば、85%はお子さんが授かります。不妊治療を成功させるためには、途中で心が折れないように、長期戦に耐えられるような精神状態を保つことが大切です。

そのために、不妊治療以外に、打ち込めるものを見つけましょう。子育て中の女性には、プライベートの時間など、ほとんどありません。子どもを育てながら働いていれば、なおさらです。今、お子さんがいないあなたは、子を持つ女性が育児にかける分の時間があります。音楽、絵画、スポーツ、ガーデニング……何でもいいので、自分の好きなこと、没頭できることを見つけて時間を有効に使うことをおすすめします。

不妊症のことばかり考えていると、悪い結果が続いた時、どんどん深みにハマってきてしまいます。例えば、「また今月も生理がきた、失敗した」と思った時にトイレで泣いて、基礎体温計をぶち壊すようなことをせずに、悲しい時、つらい時は一度そこから離れて、好きなことに没頭する。そして気持ちを切り替えて、「また来月、頑張ろう」と思えるかどうか、そこが重要なのです。

私もこれまで、院長という立場上、誰にも言えないつらいことがたくさんありました。その時にどうしたか。私の場合は音楽でした。つらいこと、嫌なことがあると、ちょっと中座して音楽を聴いて、気持ちを切り替えて戻ってくる。私が今でもいつもiPodを持ち歩いているのはそのためです。自分の経験から、不妊に悩む女性たちに、セルフコントロールの大切さを訴えているのです。

ピンチはチャンス。治療をきっかけに
人生を充実させることはできます

気持ちを切り替える上で大切なのは、「一人でする」ということです。人と会ってリフレッシュするなどは一見いいのですが、その友だちが不妊仲間だったりすると、相手に子どもができた途端、妬みに変わって仲が悪くなり、かえって傷が深くなる。ですから、自分一人で自分を癒せる何かを見つけなさいといつも言っています。

精神的な安定は、生殖能力にかなり影響すると思います。私の患者さんには46歳以上で妊娠出産した女性が何人もいますが、共通点は、全員仕事をしていることと、大らかだということです。その年齢で子どもができるということが、すごいことだという意識がない。48歳という日本で最高齢の出産だったのに、「先生、もう一人つくっていいかしら」などと言う。小さいことにこだわらないで、大らかに人生を楽しんでいるような前向きな人が、不妊治療を成功させている人には多くいます。

よく、「ピンチはチャンス」と言いますよね。一般的に考えれば、確かに子どもができないのはピンチかもしれません。でも、不妊治療をきっかけに自分の人生を充実させる。そういう発想を持ってほしい。不妊治療は、チャンスなんですよ。「子どもができない、どうしよう…」と思わずに、「私には子どもがいない分、時間がある。何をしよう」と前向きに考えてくれると嬉しいですね。
私は、子どもができないことで、女性として何かが欠けているなどとは全く思いません。ですから、お子さんを授からない女性もそんなふうに思わないでほしい。子どもがいなくても、一人でも、二人でも、立派な人生を送っている人はたくさんおられるのですから。

【Profile】
セントマザー産婦人科医院院長 田中温
85年日本初のギフト法による児誕生に成功。現在は良い卵を育てる方法の検討や円形精子細胞を用いた顕微授精に力を注ぎ、日々の診療にあたっている。不妊症治療のゴールは妊娠ではなく出産であると考え、お産に関するサポート体制はもちろんのこと、アロマセラピー、漢方、遠赤外線医療など、身体に負担の少ない代替療法も多く取り入れている。

セントマザー産婦人科医院  http://www.stmother.com/

<information>
「癒しフェア2013 in TOKYO」にて、田中温先生が講演と無料相談会を開催します!
※相談会は、事前予約制です。
http://a-advice.com/tokyo_2013/guest/tanakaatsushi/

★PART.1はコチラ

Text:Izumi Sakauchi