「日本は、仕返しのない平和をつくることができる国」。世界から見た日本とは?中野裕弓さんインタビュー PART.3

「日本は、仕返しのない平和をつくることができる国」。世界から見た日本とは?中野裕弓さんインタビュー PART.3

心がラクになるコミュニケーション法 “ホワイトライ”

― 建て前ではなく、本音を上手に伝えるには?

中野さん
「本音を伝える技術の一つに“ホワイトライ”があります。英語で“白いウソ”。日本語なら“方便”。誰も傷つけることなくスムーズに流れていくストーリーをつくることなんですよ。嘘ではなく方便だから、自分の直感に素直に生きられるし、建前に取り込まれてストレス抱えることもないし、自分の気持優先で、自分自身を大切にすることだから罪悪感も必要ない。

たとえば“飲みに行こう”と誘われても行きたくなかったら、“今日は遠方から友達が来ることになっているので、行けないの、ごめんなさい。でも楽しんでね”って言えばいい。断れないからと無理に行って、不愉快な思いをして疲れきって、帰ってから家族にあたるなんて大変よね。昔は自分の本音より社会の建前が優先で生きにくいところもあったけれど、今はいろんな意味で過渡期で、だんだん自分を大切にする生きやすい世の中がくると思う。世の中は明らかに良い方向に動いているって確信しています。」

― なぜ、そのように明るく思えるのでしょう?

中野さん
「う~ん、一言で言うと、人生は限りがあると知っているからかしらね。悩みがずっと続く、永遠だと思うと無力感で暗くなるけれど、どんなことも限りがある、いつか終わると思ったら感じ方が変わるでしょ。終わりが来るからこそそれまでどうにかしよう、と開き直って、この世の中を明るくすることに覚悟が決まるっていう感じかしら」

日本的な「三方良し」の商人哲学が、真の平和をつくる

― 外国で、日本人として重宝される点はありますか?

「世界銀行にいた時代に、“問題をどうやって乗り越え解決するか?”というテーマで、マネージャーさんたちにセミナーをして下さいと頼まれたんです。

そこで、“WIN WIN”という、誰にとっても良い解決法で、誰の顔もつぶさない、誰にとってもメリットのある解決法をお話しました。“WIN WIN”って日本人のDNAのなかにあるでしょ。どんな相手もつぶさないという「一寸の虫にも五分の魂」という日本的な感覚で講義したら、まったく理解されなかったんです。参加者に“欧米のビジネススクールで習ってきたWINWINとはずいぶん違うね”と言われ考えてしまいましたね。

西洋的なWINWINは、たとえば当事者が5人いたら、その5人が損をしないように考えます。でもその部屋の外にいる人のことは関係ないの。でも日本人には“世間様”という感覚がある。近江商人の三方よしの考え方、つまり売り手も、買い手も、世間も三方が良くないと商売が成り立たないという思いやりのDNAが入っているでしょ。

西洋では、力関係が“強い”“弱い”以外はないんだもの。以前のどこかの国のトップのように自分たちと友好関係を結んだ相手とはWIN WIN、でもそれ以外は“悪”と呼んで敵対する、というようなマインドセットのなかで世界の平和を創ろうとしても無理があるのね。それではパッチワークのような部分的な平和しか創れない。モグラたたきのようにひとつ叩いても、必ずどこかでまた、虐げられた人が出てきて仕返しをしてしまう。その連鎖なのね。

そういう点で日本は、仕返しのない平和を創ることができる国民だと思うのです。日本の良さはそこにある。人の思いをちゃんと分かってあげようという思いやりの心とか、よその人に悪いよねっていう心があるでしょ。そういう日本人にとっては普通の考え方は、世界に誇れるものだと思います。

世銀の採用面接の時、私は、“和をもって尊しと成す”という日本的な考え方を世界の舞台に持っていきたいと語りました。世銀時代は100カ国以上の人たちと一緒に働き、多様性の中でいかに協調するかということを学ぶとてもいい機会でした。これからの世の中は、相手と競う「競争」でななく、共に創る「共創」という考え方になっていきます。そういう考え方は日本から海外に出て行く余地がまだまだあると思います」

~続く~

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Profile:
中野裕弓さん  公式HP http://www.romi-nakano.jp
『世界がもし100人の村だったら』訳者。世界銀行本部に日本人初の人事マネージャーとしてヘッドハントされる。著書に『世界でいちばん自分を愛して』(日本文芸社版)、『朝一番の、ちょこっとスピリチュアルな習慣』(メディアファクトリー)ほか多数

 


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