一宮千桃のスピリチュアル☆シネマプレビューPART.14 「奇跡のリンゴ」

無農薬リンゴを世界初で成功! 感動実話の映画化!

リンゴが年何十回も、決められた時期に決められた種類、濃度、量の農薬を散布しなければ実らないなんて知らなかった。しかもそれプラス、畑を耕し下草を刈り、肥料を与え、虫を取り、剪定し、花摘みをし、一個ずつ袋で覆う作業がある。それだけやってもその年の気象条件に大きく左右される。農薬を使ってさえ、そんなにデリケートで手間のかかるリンゴを無農薬でつくろうとすることは、まさに、奇跡なんだと!

それを11年かけて世界初!成功させた木村秋則さんつぅ男はごっつう男ね! もう号泣すたね! と、津軽弁はむずかしかぁよ。

そういうわけで、本作は木村さんが無農薬リンゴ栽培を成功させるまでを描く大感動作だ。とにかく、この夫婦愛に、家族愛に、気持ち良く泣けます。こういう良質のドラマこそ、どんどん日本映画でつくって欲しいと思う。

あそこで、ここで涙腺ぶちキレまくり!

木村さんが、無農薬栽培を始めようと思ったのは、妻の美千子(役名・美栄子)さんが農薬に弱く、散布のたびに肌がかぶれたり寝込んだりするのを見て決意したそうだ。美千子さんは学生時代から木村さんのことをよく知っていて、結婚してからも黙って木村さんを支えつづけた。
とにかく、無農薬なんて狂気の沙汰なので、木村さんは実家の家族や親友や、村全体から村八分状態になる。ちっとも栽培はうまく行かず、収入は何年もなく、娘たちも学校で辛い思いをする。もう、八方破れのどん底状態。それでも、美千子さんは夫についていこうとするが、木村さんの方が耐え切れず「離婚してくれ」と言い出してしまう。

「ずっと一緒に生きていこうって言ったのに、別れてくれって……」と、美栄子がご飯を食べながら父親に言うシーンはガーッとこちらも涙! 食べながら泣けないよっ。でも、演じる菅野美穂は泣きつつも食べる。こういうシーン中村監督巧い! 泣けるんだ、こういうシチュエーションて!

もうひとつ、出稼ぎに都会に行ったものの、稼いだお金を盗まれて一文無しになり、公衆電話から家族に電話するシーン。もちろん、電話は繋がってないんです。ただツーツーという受話器に語りかけながら泣き崩れる木村さん……。うがあっ、ここでも涙腺ぶちキレまくりでしたっ。

もうギリギリ、限界!ってこちらも涙涙で顔べちょべちょだよ、ってところでついに無農薬栽培の糸口を掴む! ああ、そこからも泣かされましたけどね(笑)。おだやかなラストには泣きすぎての虚脱感と清々しいカタルシスがない交ぜで、呆けたようになってしまったけど(笑)、大満足で家路にたどり着きました。

木村さんは神に試されつづけ、愛された人?

スピリチュアル的な観点で言えば、木村さんという人は試されつづけた人だな、と思う。誰に? 神に。無農薬のリンゴをつくるという天命があったのだと思うけど、それは、これだけの困難が伴わなければできないものだったんだろう。そして、彼はリンゴづくりの過程でいろんなものを学んだはずだ。それに、彼は一人じゃなかった。妻も子供も味方だった。ものすごく神に愛されている人なんじゃないかな、と思う。きっとこれからの人生もそう変わらない日々のような気がする。つまり、困難な時もこれからも、彼はしあわせ者なのである。

木村さんたちの愛が詰まったリンゴが食べたくなる、佳作です。

『奇跡のリンゴ』
2013年6月8日(土)より全国東宝系絶賛公開中!
©2013「奇跡のリンゴ」製作委員会
http://www.kisekinoringo.com/
出演/阿部サダヲ 菅野美穂 池内博之 笹野高史 伊武雅刀 / 原田美枝子  山﨑努
監督:中村義洋 、原作:石川拓治「奇跡のリンゴ」(幻冬舎文庫) 、脚本:吉田実似 中村義洋 、音楽:久石譲

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