映画「パパの木」~木を植えることを通じて命の尊さを学ぶ

映画「パパの木」~木を植えることを通じて命の尊さを学ぶ

とても素敵な映画と出会ったのでご紹介します。突然愛する夫をなくした妻、パパを亡くした少女がその悲しみを、一本のイチジクの樹木と対話していくことで立ち直っていくという、“木は人の心を救う”ことが描かれた映画です。

―木と話すことは自分と対話することだと思います。
悲しみや孤独を、木は静かに受けとめ、
傷が癒えるのをゆっくりと待ってくれます。
倒れても、いつか再び芽を出す大樹のように、
人もまた光に向かって生きる勇気を教えてくれる映画です。―映画『パパの木』公式サイトより

STORY―ストーリー

舞台はオーストラリアの大自然の中。庭に大きなイチジクの木が立つ家で、ドーン(シャルロット・ゲンズブール)は夫ピーターと4人の子どもたちと一緒に幸せに暮らしていた。ところが、ある日突然、ピーターが心臓発作を起こして死んでしまう。最愛の夫が急にいなくなり、途方に暮れるドーン。心も体も悲しみと喪失感でいっぱいで、子どもの世話どころか、日常生活もうまく送れない。
8歳の娘シモーンは父親が死んだ時にぶつかったイチジクの木に“パパがいる”と思いこみ、木とおしゃべりを始める。シモーンはなかなか立ち直れない母親を元気づけようと、木にパパがいるという秘密を打ち明けた……。
ストーリーの詳細はこちら
http://papanoki.com/story.php

MESSAGE~暗闇のときも光を目指して生きる

この映画をひと言で語るのはむずかしいですが、まるで暗い森の中に射しこむ木漏れ日のよう…と表現したらいいでしょうか。観終わった後、優しい光に心が満たされていくように感じました。何が起ころうと、どんなに暗闇のときも、太陽の光を目指して伸びていく、大きな木の枝や葉をシンボライズしたような映画です。そう、この『パパの木』には“木が教えてくれる、生きる力”が美しい映像とともに散りばめられています。

クレヨンで描いたファミリー・ツリー

西欧では家族のつながりを「ファミリー・ツリー」と呼び、「木」に例えることがあります。夫であり父親であるピーターの突然の死。葬儀のとき、子どもがクレヨンで描いたファミリー・ツリーが画面いっぱいに映し出されます。母親と父親が根元に描かれ、そこから家族がどんどんと増えていく姿が木の枝張りで表現されています。大きな木の下にみんな集まって食事している写真も映され、ファミリー・ツリーの存在によって、過去の幸せが見えてきます。しかし現実はそうではない。何よりも家族は大切であり、その家族の命をどう受け継いでいくか? を観る人に投げかけているようです。

木を植えることは命をつなぐこと

いちばん好きなシーンは、倒れた木から芽吹いた小さな木を子どもたちが自らの手で植えるところです。たとえ倒れても、その大樹の分身というべき小さな芽が成長することで、木の命を受け継いでいく。それと同じように、父、そして愛する夫の命を受け継いでいく。小さな木を、兄弟妹たちの小さな手で一緒に植えるシーンは、その木が大きく育っていくことも予感させます。そういった普遍的な命のつながりが、「木を植える」ことで表現されていました。

東日本大震災から2年の今、観たい映画です

大震災から2年の今、公開されることに意味があると思います。震災直後よりも2~3年経った頃、心に病を抱える人が増えるといわれています。大切な人を突然失った人たち、家を失った人たち、そして、その人たちを支えようとするすべての人が、もう一度前を向いて歩いていこうと思える映画だと思います。孤独に陥ってしまうのではなく、手をつないで、誰かとともに生きていく喜び。とはいえ、他者に依存してしまうのではなく、自らの力で前に進もうとする勇気。それを大きなイチジクの木が象徴してくれています。

●TREE―映画に登場する木
イチジク(クワ科イチジク属・常緑高木)
映画のパンフレットなどには“イチジク”と書かれていますが、私たちがよく食べるイチジクとは違います。この木の仲間はゴムノキやガジュマル、インドボダイジュ。熱い国に生育する巨大な木です。

●監督&脚本はフランス人のジュリー・ベルトゥチェリ
監督であるJ・ベルトゥチェリもまた愛する夫を亡くした経験を経て、この映画の製作に入ったといいます。大切な人を失った後、どう立ち直るか? という問いかけは、監督自身への問いでもあったのだと思います。初めての監督作『やさしい嘘』(2003)でカンヌ国際映画祭の批評家週間でグランプリ、セザール賞最優秀作品賞を受賞。主にドキュメンタリーを手掛ける監督。
監督についての詳細はこちら
http://papanoki.com/cast4.php

映画『パパの木』
http://papanoki.com/
6月1日(土)、シネスイッチ銀座にて始まります。順次全国公開予定。
※commentには著名人のコメントともに、杉原梨江子のメッセージも掲載されています。
●『週刊朝日』にインタビュー記事が掲載
『週刊朝日』5/31号のP57「ツウの一見」では、映画『パパの木』についてお話ししたインタビュー記事が掲載されました。図書館などでご覧ください

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