『日本ふしぎ発見――地球と人類再生のために見直そう日本の不思議文化の旅』PART.10

『日本ふしぎ発見――地球と人類再生のために見直そう日本の不思議文化の旅』PART.10

第10回 世界的作家遠藤周作の心霊体験とインド回帰

「クリスチャンであった遠藤周作の心霊体験と輪廻転生への探索」

これまでこの連載で取り上げてきたのは主に明治期の文化人、文豪でした。
しかし、より私たちの時代に近い知識人、文化人、文豪が、不思議体験や死後の世界に対してどのような興味を抱いていたのかについて、興味を持っていらっしゃる方も多い事でしょう。

そこで、今度はしばらくの間、現代を代表する人たちの不思議体験を取り上げてみたいと思います。
まず、その第1弾として戦後を代表する世界的作家遠藤周作の霊体験をご紹介したいと思います。遠藤周作は幼くして洗礼を受け、クリスチャンとなります。遠藤自身は生涯クリスチャンであることに違和感を抱いていましたが、そうはいっても遠藤はクリスチャンであることをやめませんでした。

違和感を抱いていると言ってもクリスチャンである以上、霊体験や死後の世界はあるはずのないものです。ところが、遠藤は、ものの見事に霊体験をしてしまいます。『新・あの世はあった』で引用し解説しておりますが、まずフランス留学中2度にわたり霊体験をします。

1回目は、あのフランスの国民的英雄で聖人とされるヒロインージャンヌ・ダルク生誕の地ルーアンの小さな宿屋に宿泊した際に、起こりました。その宿屋の1階は酒場であり安料理屋であったのですが、そこに来ていた人夫のような男たちは遠藤が宿泊を頼みに入ってくるとニヤッと笑ったり小声でささやいたりしたそうです。案の定、夜、その宿屋で寝ているとたびたび何ものかの気配がして起きてしまったそうです。その様子を、遠藤は真に迫った感じで書き記しています。どうやらこの地には戦争の傷跡があった事が後にわかってきました。

2回目は、アルプス地方の中心地で、サン=テグジュペリ他多くの文化人を生んだ町リヨンの学生寮での体験です。この時期、フランス人の学友は帰郷してしまい4階建ての建物に遠藤と門番夫婦しかいなくなります。夜、遠藤の他には誰も帰ってこないはずの学生寮に鍵を開けて何者かが入ってきて階段を上っていったという事件が続きます。しかし、建物の中には誰もいないのです。
さて、このようにフランスで2回ほど霊体験をした遠藤は、今度は日本で同じ世代の作家である三浦朱門とともに熱海の旅館の離れに泊まり、2人ともに霊体験をします。2人ともにと言っても一緒に眠ったり起きたりすることはできませんから、それぞれが睡眠中にうなされて悪夢を見たり、目を覚ました際に目撃したりしたものが奇妙に一致しているのです。2~3回悪夢にうなされたり幽霊を目撃した2人は恐怖のあまり、その離れの部屋から抜け出します。後に聞いた話では、やはりその離れの部屋はいわくつきの部屋でした。その後、三浦は家に帰ってから妻の曾野綾子の車に怪奇現象が起こったり、遠藤はある青年から同じ体験をした事を電話で聞いたり、遠藤は再度旅館のそ離れに行き、怪奇現象を体験したりなどの事がありました。その後、遠藤は全国の有名なお化け屋敷を訪ね、怪奇小説に手を染めていったと言います。

また、かつて遠藤がフランスでの霊体験を話した際に遠藤を嘘つき呼ばわりした作家の柴田錬三郎は後に霊体験をする事になり、やはり遠藤と交友関係のあった作家の佐藤愛子もまた霊体験をする事になります。
さて、クリスチャンであった遠藤ですが実際に霊体験をしたことが影響したのでしょうか、後年は『深い河』においてインドのガンジス川を舞台に人間の業や輪廻転生を描いています。

 

遠藤周作『怪奇小説集「恐」の巻』

遠藤周作『怪奇小説集「怖」の巻』

高橋克彦編『日本の名随筆別巻64怪談』(三浦朱門「遠藤の布団の中に」)

遠藤周作『深い河』

三浦正雄著『新・あの世はあった』