一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.11 ひそやかで激しい恋の物語「言の葉の庭」

一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.11 ひそやかで激しい恋の物語「言の葉の庭」

「秒速5センチメートル」の新海誠監督最新作

新海誠監督の名前は何年も前から聞いてはいたのだけど、なぜか観る機会がなくて、今回初めて観ることができた(即、レンタルショップに走りました(笑))。
すごいショック!と後悔!こんなすごい作品を撮る監督のことを未チェックだったなんて! そして、喜び! まだこれからも彼の作品を私が生きている限り、彼が生きている限り観ることが出来る! と頭と胸がぐらぐらキュンキュン状態でした。

で、どんなすごいかと言うと、まずオープニングから仰天! あれっ?これ実写だったっけ? と思わず目をパチクリしたほどのリアルな映像! 街が、樹木が、雨が、光が、電車が、まるで写真みたいに描きこまれていて、そこへアニメのキャラが出てくることが違和感という。なんちゅう細かさっ。ディテール懲りすぎ!? いや、すべての風景や自然現象、静物は肉眼で観るより、改めて絵で描かれることによってこそ、本来の姿や美しさを露呈するものだとよく分かる。これぞ芸術の醍醐味だ。

「ああ、雨ってこんなふうに降るんだったな……」
「光ってこんなに反射するんだ」
「木って重なるとこんな影になるんだ……」
私は何度も胸が震えた。
映像でこんなに胸が震えるなんて久々だ。しかもアニメの映像で。

少年の血を吐くような告白!にドキ!!

雨になると午前中の授業をサボり、一人お気に入りの日本庭園に行ってスケッチをする少年。彼が雨の街を抜けていくところから物語は始まる。
少年はそこでチョコレートをつまみにビールを飲む女性に出会う。雨の日には彼女はいつもいて、いつしか少年は彼女と言葉を交わすようになる。そして、少年は謎めいた彼女との逢瀬を楽しみにしだすのだが……。

何度もうるうるしてしまった。
少年の幼い、でも透明で鋭くて繊細な恋心が激しくハジけるクライマックスは、こちらの心も血を吐きそうになった。こんな告白されたら……するしかないよね! ドッキドキの超盛り上がりシーン。女冥利に尽きます!
いいなあ……すっかり恋することを忘れていましたが、恋する気持ちをこんなロマンチックに描ける技術や計算の方に関心ばっかしてるようじゃ、駄目なんだろうなあ(笑)。

「怖れ」はすべてのドアを閉ざす

さて、スピリチュアル的な視点でみると、ヒロインの造型が今風。
彼女は職場でのある出来事が原因で、「うまく歩くことができなくなった」。どうやって自分を立て直したらいいのか分からなくて職場に行くことができない。怖くて前に踏み出せないのだ。こういう若い女性は少なくないのだろうなと思う。でも、彼女は少年との出会いによって勇気を出して前進する。人間は「怖い」という気持ちが全てのストッパーになりがちだが、それじゃ何も変わらないんだと思う。「怖い」と言う気持ちを持つこと自体が怖いことなのだと教えられる。

世界はこんなにも美しい!

緻密に作りこまれた絵や脚本、キャラクターなど、職人の技を見せられる思いだが、そこで描かれる人の気持ちも深いものであるということが、新海さんの映画の魅力だと思う。世界はこんなに美しいものだったのだ……それに気づかせてくれただけでも私にはうるうるものだった。世界はこんなにも美しい。生きて、恋する価値のあるものだ。そう思わせられた傑作!です。

「言の葉の庭」
5月31日(金)~全国ロードショー
原作・監督・脚本/新海誠
声の出演/入野自由、花澤香菜
http://www.kotonohanoniwa.jp/
(C)Makoto Shinkai / CoMix Wave Films 

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