娘を失った母親と、母親を失った娘……。二人の女性が悲しみを癒す日は来るのだろうか『爆心 長崎の空』

戦後70年近くたった長崎で二人の女性が出逢う

長崎では、かつての爆心地周辺に、原爆を体験した人、その子どもたち、孫たちが生活を続けています。
出演は北乃きい、稲森いずみ、柳楽優弥。芥川賞作家で長崎原爆資料館館長の青来有一の原作を、日本を代表するジャズピアニスト・小曽根真の音楽に乗せて、『誰がために』『火垂るの墓』で高い評価を得た日向寺太郎監督が3世代にわたる人々の記憶と現在の想いを丁寧に編み上げた静かな感動作です。

 

~あらすじ~

大学3年生の門田清水は、ある朝つまらないことで母親と喧嘩をしてしまう。
その夜帰ってみると母親は心臓発作で死んでいた。夕方電話を受けたのに、彼女は出なかった。恋人とホテルにいたからだ。彼には母の死は伝えていない。そんな彼から卒業したら東京に行こうと誘われる。
母親の死は、彼のせいじゃない。でも責めそうになる清水。もうふたりは元には戻れないのかもしれない。

母親が残してくれたカレーライスを食べるときも、消さずにいる留守電のメッセージを何度も聞いているときも、彼女は自分を責め続ける。「あの時電話に出ていればお母さんは死ななかったのかもしれない」そんな彼女励ます父親……。

ある日、住宅地で原爆で亡くなった人たちの遺骨が見つかった。
誰も死ぬなんて思っていなかった。「さようならまた今度。」そんなことを言う間もなしに一瞬ですべてが断ち切られた。残された人はいろいろなものを背負うことになる。「どうして自分が生き残ったのだろう」そうやってこの町の人たちは生きてきた。
「お母さんはお前のことを愛していた。それだけ覚えていたらいい」

高森砂織は娘の沙耶香を失ってから一年が経とうとしていたが、悲しみからいまだに立ち直れずにいた。ベランダでタカラガイを拾う。親子3人で遊んだ海で沙耶香が集めていたものだ。しかし夫をはじめ他人の目にはそんなものは見えていなかった。
砂織の実家は300年続くキリシタンの家で両親とも被爆者。新聞記者をしている砂織の夫は被爆した当時の話を聞かせてくださいと依頼しているが、かたくなに拒否している。
当時のことは思い出したくないのだ。砂織は新しい子を身ごもるが生む自信を持てずにいた。また大切な人を失ったら本当におかしくなる。砂織もまた自分を責めつづけていたのだ。沙耶香が亡くなったのは自分が被爆二世だからだ、と。

車道に落ちていたタカラガイを拾おうとして車にひかれそうになった砂織を清水が助ける。「あなたには見える?」清水はうなずいた。「あなたも大切な人を失ったのね」……。

娘を失った母親と、母親を失った娘……。
悲しみを抱える二人の女性が、長崎を舞台にが出会い、心を通わせる再生ストーリー。

 

『爆心 長崎の空』

7月13日(土)~19日(金)岩波ホール特別プレミア上映
7月20日(土)東劇ほか全国ロードショー

(C)2013 「爆心 長崎の空」パートナーズ

原作:青来有一『爆心』(文春文庫刊)
第43回 谷崎潤一郎賞、第18回 伊藤整文学賞 受賞作

監督:日向寺太郎
音楽:小曽根真
題字:金子兜太
主題歌:「ひまわり」(ユニバーサル ミュージック)唄:小柳ゆき

製作:鈴木ワタル、プロデューサー:沢田慶、脚本:原田裕文、撮影:川上皓市
照明:川井稔、録音:橋本泰夫、美術:丸尾知行、編集:川島章正、装飾:吉村昌悟 助監督:松尾崇
制作担当:中村哲也、衣裳:宮本茉莉、ヘアメイク:前田美沙子、スチール:遠崎智宏
協力:長崎県、長崎市、文藝春秋
製作:パル企画/メディアファクトリー/日本スカイウェイ/長崎放送/長崎ケーブルメディア
配給:パル企画

出演:北乃きい、稲森いずみ/柳楽優弥/北条隆博、渡辺美奈代/佐野史郎/杉本哲太、宮下順子、池脇千鶴、石橋蓮司
(2013年/日本/カラー/ビスタサイズ/98分)