一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.10 『ビル・カニンガム&ニューヨーク』(2010年 アメリカ)

一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.10 『ビル・カニンガム&ニューヨーク』(2010年 アメリカ)

84歳現役ファッション・フォトグラファーの痛快人生!

ビル・カニンガム……誰? 84歳の現役ファッション・フォトグラファー。元は帽子のサロンを開いていたが、兵役後ファッション記事を書き始め、同時にストリートファッションの写真も撮り出す。それがニューヨーク・タイムズの名物コラム「0N THE STREET」となり、現在まで50年以上毎日街に出て、ファッション・スナップを撮りつづけている。移動は自転車!という破格に元気で陽気なおじいちゃん!なのだ。で、この映画はそんなビルを追ったドキュメンタリー。

監督はなんと!8年かけてビルを口説き落とし、映画化にこぎつけたというから驚く(撮影・編集にさらに2年!)。ニューヨークのファッション業界の人々はビルの表面的なことは知ってるけど、プライベートなことはなんにも知らないという。とにかくファッションが好き、というビルのパワフルな生き方と、対照的なメンタル部分が垣間見れる、貴重で興味深いフィルムとなっている。

自転車でビルは毎日街に出て、スナップを撮る。時に「勝手に撮るな! カメラたたっ壊すよ!」と怒鳴られたりするけど、苦笑いで次の被写体へ。ニューヨークのストリートには奇抜なファッションが溢れている。私が10年ほど前に初めて一人でニューヨークへ行った時は、ファッションに注目する余裕もなかったっけ。なんか、ダサいジーンズとTシャツの人しか歩いてなかったような気がする。この時もビルは街で写真を撮ってたんだね~。

ビルの放つアフォリズム(金言)はメモ必須!

映画はビルの日常を追いながら、彼を知る人々の証言、そして彼らをビルが撮ったスナップ、ビルへのインタビュー、彼の古い写真などで構成されている。面白いのは彼のインタビューでの金言だ。
 
たとえば「誰でもセンスはある。ただ勇気がないんだ」とか「ニューヨーカーはものを粗末にしすぎる」「パリのファッションウィークには半年ごとに来るけど、学校に来るみたいだ。目には何度でも学ばせないと」「ファッションは鎧だ。日々を生き抜くための」などなど数知れず。思わずメモりました(笑)。
 
この映画を見終わって、「そう……なんでも着ていいんだった」そして、「服は私自身の表現だった……」とすっかり忘れていたことを思い出し、まさに、勇気をもらえたよ、ビル! となること請け合いだ!

ビルに寄り添い支えつづける「信仰」とは……

スピリチュアル的視点で興味深かったシーンがある。たぶん、この映画での出色なカットだろう。ビルは日曜日にはかならず教会に行くと言う。それは幼い頃に教会に行って信仰に出会ってから、彼の生活には欠かせないことだ。監督が信仰について聞くと、ビルは今まで笑っていたのに急に真顔になり、うつむき10秒ほど黙りこんでしまう。監督が答えなくてもいい、と言うと「信仰は生きる指針になる。少なくとも僕にとっては必要だ」とうつむいたまま答える。
 
「仕事が忙しくて恋愛する時間がなかった」、とずっと独身のビル。ファッション写真を撮ることだけに興味があって、それ以外はどうでもいい質素な、まるで清教徒のような生活や彼の生き方の裏には、やはり「信仰」というものがあるのだ。また、なかったら辛いものがあるのだろう。時に見せるビルの歳相応の苦渋の顔に何度かハっとしながら、彼に寄り添い支えつづける「信仰」の偉大さに今さらながら深遠なものを感じた。「信仰」を持つ人は強い。さて、私は……と我が身を振り返らせてくれた逸作である。

『ビル・カニンガム&ニューヨーク』(2010年 アメリカ)
http://www.bcny.jp/
監督/リチャード・プレス 出演/ビル・カニンガム、エディッタ・シャーマン、アナ・ウィンター、トム・ウルフ、パトリック・マクドナルド

5月18日(土)より、梅田ブルク7/T・ジョイ京都にてロードショー!
5/25~、シネ・リーブル神戸にて
(c)First Thought Films / Zeitgeist Films

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