『日本ふしぎ発見ーー地球と人類再生のために見直そう日本の不思議文化の旅』PART.3

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第3回『乳房榎』…不思議な樹液の物語

「不思議な樹液を飲んで育った子どもの物語。
人類は、植物の力に支えられて繁栄してきた!」

樹木からしたたり落ちる樹液には、不思議な薬効があると言われています。有名なところでは、白樺の樹液があります。保湿、老化防止、リューマチや関節炎の薬、胃腸薬、利尿効果などの効能があるそうです。良いことづくめですね。

また、日本人は胃にピロリ菌が生息していて、それが日本人に胃ガン・胃潰瘍(かいよう)が多い原因だと言われていますが、ピロリ菌を殺菌する効果がある樹液としてギリシャのマスティックがブームです。

さて、第1回でご紹介した咄(はなし)家で明治期の大文化人であった三遊亭円朝に『乳房榎』というお話がありますが、この物語の中にも不思議な樹液が登場します。

主人公の絵師である菱川重信には美しい妻おきせがいます。その美しさに目をつけたヤクザな浪人者である磯貝浪江が、重信に弟子入りしてチャンスをねらいます。重信はお寺の天井絵を書いていて家を留守にしていますが、その留守につけこんで浪江はおきせを関係を強要します。重信とおきせの子真与太郎を殺すと言うのです。子どもを守るためにおきせは浪江に身体を許します。さらにチャンスを見計らって、浪江は重信を殺害しようとします。門番の正介を仲間に引っ張り込んで、重信を誘いだして殺してしまいます。

門番の正介は良心の呵責に悩みますが、浪江はさらに正介を脅迫して絵師重信の子真与太郎を殺そうとします。正介は真与太郎を滝に投げ込みますが、間一髪現れた重信の幽霊に阻まれて、真与太郎は助かります。重信の幽霊は正介に、真与太郎を育てることとかたき討ちを命じます。

正介は松月院というお寺の門番となり、乳の代わりに松月院の榎の樹液で真与太郎を育てます。その後、この榎は、女性の乳の病に薬効があると言う評判がたちます。重信の妻で浪江のものになったおきせも乳に腫物ができ、榎の樹液をつけると回復します。しかし、悪行による病のため、重信の亡霊の恨みにより苦しみが再発してしまいます。浪江は、うみを抜くために小刀で少しだけ乳の皮膚を切るつもりで、誤っておきせを刺し殺してしまいます。浪江は、正介と真与太郎を殺害しようと考えます。

一方、正介は真与太郎にこれまでのことを話します。重信の幽霊の助けもあり、4歳の真与太郎はさびた刀で、父のかたき討ちをやりとげます。

現在、4代目が現存する「乳房榎」の樹液

以上のようなストーリーなのですが、門番の正介が主人の子真与太郎を育てる際に、乳がわりに飲ませたのが、女性の乳の病に薬効があると言われていた乳房榎の樹液でした。この木は現在も4代目が現存しています。

アメリカの嘘発見器の第一人者バクスターが植物にポリグラフをつけて実験を行ったそうですが、植物を殺そう(?)という悪意をもった人が近づいてくると、植物は生命の危険を感じてそれに反応してポリグラフの針が激しく動いたという話は有名ですが、植物にも人間とは違うけれども、意識のようなものがあるのでしょうか。植物にはまだまだ神秘が隠されていそうです。

植物は、さまざまな形で人間と共生し、ときに人間を助けてきたのです。

三遊亭円朝作『怪談乳房榎』

三浦正雄著『新・あの世はあった』