【TRINITY No.46連動企画】「TOHOKU LONDON」~会津木綿で新たな命を生み出す東北復興プロジェクト PART.1

震災を機に日本の伝統を世界へ発信

日本脱出!」がテーマのTRINITY No.46では、各国駐日大使や叶姉妹、LiLiCoさん、海外で活躍する日本人の方々をご紹介しました。留学や仕事、国際結婚……様々な目的で海外に暮らす方々のお話をお聞きして実感したのが、みなさん、海外で暮らすための確固たる目的があり、そして揺るぎない日本への愛着があるということ。離れていても、常に心の中にある故郷。その思いは、2011年の東日本大震災をきっかけに更に強くなった方が多いようです。

今回インタビューをさせていただいた左右田智美さんもその一人。イギリス在住のデザイナーとして活躍している左右田さんは、東日本大震災で大きな被害を受けた東北の復興のお手伝いがしたいと一念発起し、デザイナー集団である「TOHOKU LONDONプロジェクト」を立ち上げました。

会津木綿をイギリスで販売する

活動は、300年以上も会津若松地方で生産され続けている会津木綿を使って現代的なプロダクトをデザインし、何と販売するのはイギリス・ロンドンです。
会津木綿は江戸時代前期から地元の人々に愛用されてきた厚手のこだわりの綿の布地で、染めから織りまでの行程を会津の工場で行われています。会津木綿には伝統の柄、現代の柄も含んだ何百種類ものオリジナルの縞模様があるそう。
会津木綿の独特な風合いは、ほっこりとした優しい印象を与えてくれます。そしてこのテキスタイルは、一見オールドスタイルに見えつつも、海外に行けばとても新鮮なものとして受け入れられるそう。東北で技術提供をし、ロンドンをはじめ、世界のマーケットに向けてデザイン・販売し、東北の魅力的な伝統文化を紹介しながら東北の地域振興を図っています。

「始まりは東日本大震災が起こって、日本人のデザイナーとして何かできないかと、ロンドン在住のデザイナーの友人と話し合った事がきっかけです。募金活動やチャリティー組織をつくるのではなく、若手のデザイナーとして何かできないか、やるからには何か生み出したいと友人と何度も話し合いました。そして現実的・継続的にできる形として、日本から東北の布を輸入して、ロンドンでデザイン、ハンドメイドの品を作って販売するという形に行き着きました。このプロジェクトを実行するにあたって、震災から3か月後に実際に東北の被災地、2件近くの東北六県の伝統工芸の現場を視察に行きました。足を運ぶ事で、実際に何が東北で起こっているのか、現実的に何ができるのか、東北の人とコミュニケーションを取ることで具体的なアイデアを膨らませることができました」(左右田さん)

自分の武器を使い、自分にしかできない新たな視点で支援をすることは、復興の力になるだけではなく、自分自身の可能性を広げることにもつながります。左右田さんの、「若手のデザイナーとして何かできないか、やるからには何か生み出したい」という言葉には、決してブレがありません。そこに、海外で活躍できる人の底力を見たような気がしました。

 

PART.2につづく
■TOHOKU LONDON プロジェクト
http://www.tohokulondon.com/jp/

 

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