「江戸小紋」を海外に広げる
もともとは武士の裃がルーツとなって、今日まで受け継がれてきた江戸小紋。遠目にはまるで無地のように見える生地が、近くで見ると驚くほど繊細な文様で染められているのが分かります。それこそが、決して派手さないが謙虚さや粋といった日本人の美意識を刺激する高い技術が凝縮された江戸小紋の魅力です。
「日本脱出!」がテーマのTRINITY No.46では、各国駐日大使や叶姉妹、LiLiCoさん、海外で活躍する日本人の方々をご紹介しました。その企画のなかで廣瀬雄一さんのインタビューもご紹介しています。今回が連載最終回! 「江戸小紋」という伝統工芸で世界に挑戦している廣瀬さんだからこそ強く感じる日本と海外の違い。いかに商品の品質を保ち続け、そしてその魅力をわかりやすく伝えるか。情熱と努力、そして確かな技術を武器に、廣瀬さんは夢を現実のものとしつつあります。
TRINITY46号 廣瀬雄一さん記事
―日本人の美意識は世界に匹敵すると思いますか。
私はもともと海外に憧れがあったので、海外の方がセンスがあって、おしゃれなものがいっぱいあると思っていたんです。でも最近は、日本の美意識は海外に負けないぐらい進んでいる、日本人は美意識がとても高いなと実感しています。日本人が着物を着ていた時代、海外から洋服が入ってきた時に、日本人は洋服のことを「簡単着」と呼んでいたそうです。着物と比べて手間を掛けずに脱ぎ着できるからです。現代でもそうかもしれませんが、昔の日本人も、自分たちが着ている着物は少し面倒なものだという意識があったのだと思います。でも、それでも着ていたのは、着物には日本独特の美しさがあるからという理由もあったと思います。例え面倒であっても、そこには美しさがある、だからこそ着物は今に至るまでずっと、日本人から愛され続けているのだと思います。
―今後、江戸小紋をどのように発展させていきたいですか。
伝統工芸というと、多くの方が「住む世界が違う」と思ってしまい、敷居が高いと感じてしまうと思います。でも、最初は、例えばハリウッドの俳優さんの愛用品であるとか、デザインが綺麗で美しい、というような感覚で江戸小紋を気に入って頂けると嬉しいです。そして、後で「この商品は実は日本で400年の伝統があるものなんだ」と気付いて頂ける形が目標です。江戸小紋の美しさや素晴らしさを、できるだけ気軽に手に取って感じて頂けたらと思います。「江戸小紋」や「日本文化」自体を看板にするのではなく、普遍的な美しさのなかから伝統を再発見して欲しいと思います。私たちの江戸小紋は伝統ではありますが、それだけではなく新しい魅力もたくさんあると思っています。
廣瀬さんのお話を聞いているうちに、「私も海外に挑戦してみたい!」と思った方も多いはず。それには、廣瀬さんのように日本人としての自分のアイデンティティをしっかりと認識し、そして「自分はなぜ、そしてどんな才能で世界に挑戦したいか」を見極めることができれば、世界を自分が生きる場所として、もっと身近に感じることができるかもしれません。
―おわり―
▼小紋廣瀬HP
http://www.komonhirose.co.jp/
▼廣瀬雄一さんブログ
http://hyuichi.exblog.jp/
PART.1はこちら
PART.2はこちら
PART.3はこちら
PART.4はこちら
TRINITY46号好評発売中