日本の伝統技術☆麻糸産み後継者養成講座~目指せ!人間国宝

日本の伝統技術「麻糸産み」

太古の昔から日本では繊維の主流であった大麻草。化学繊維の台頭と時代の流れにより徐々に忘れ去られていった天然繊維。今では流通量も少なく大変貴重な繊維となっています。現在、麻糸産みの技術を継承しているのは、日本では僅か7名程。この状況を打開しようと、日本の伝統技術である麻糸産みの後継者を育てているのが栃木県・那須「大麻博物館」館長である高安淳一先生です。

今回は、自由ヶ丘にあるナチュラルセラピーSHOP「アンジェリ」にて高安淳一先生主宰の「麻糸産み後継者養成講座~目指せ!人間国宝」に参加してきました。

「大麻草はかつて日常生活にかかせない繊維であり日本人の心でした。神社に行くと、鈴縄や供え物を結わえる紐など様々な大麻繊維が見られます。神主は大麻(おおぬさ)をバッサバッサと振り、お祓いを行います。伊勢神宮のお札も神宮大麻と呼ばれていまよね。また、大麻にちなんだ地名や模様、学校の校章や校歌も多いですね。
かつては大麻から布を織れることが一人前の女性だと言われていました。
囲炉裏を囲み、皆でワイワイと話しながら糸を紡ぐことが女性たちの仕事だったわけです。人の手で紡いた細い麻の繊維はとても貴重で、細かな作業のため機械化ができません。ですから、大麻で織られた国家遺産の修復すらままなりません」と高安淳一先生。

 

美しい黄金色の糸

大麻の繊維は美しく、太陽の光線にあたるとキラキラ輝く黄金色。「麻」というと、触った感じはシャリシャリしていて、洗うとシワシワになってしまうイメージがありましたが、これは大麻ではなく、氷の着心地と呼ばれる「苧麻(ちょま)の特徴」だそうで、長年使い込んだ大麻100%の布を触って、びっくり。

しなやかで、柔らかく、暖かで、少ししっとりと、そして何よりもちょっとやそっとの事では破れなさそうな強さ。麻のイメージが一変しました。大麻の繊維の強さは乾燥時で綿の3~4倍、湿っている時は10倍だそうです。

麻の布を作るためには、まず糸作りから。いくつかの工程を踏んで、大麻草の茎から取り出した繊維を繋ぎ合わせていきます(上写真)。全体の糸の太さが均一になるように、調節しながら一本の長い糸をうみだします。

この作業の中にも昔の人々の知恵と技がぎっしり。知っていると簡単にできることなのに、一人で始めから試行錯誤すると、その問題を解決するのに何十年もかかってしまうこともあるそうです。

 

そして糸に撚りをかけて、美しい一本の糸にしていきます。参加者の皆さんは、この糸を使って何を作ろうかとウキウキ顔。綺麗な一本の糸が生み出されるのを見る喜び、そして皆で時間を共有し、楽しい時間を過ごす喜びを感じました。この基礎講座の後にもプロを目指すための講座も開かれており、徐々に無理なく技を磨いていくステップが整っているそうです。

現在は、昭和37年に制定された「家庭用品品質表示法」により、衣服や製品に麻と表示できるものは、苧麻(ちょま)「別名:からむし・ラミー」と亜麻(あま)「別名:フラックス・リネン」ですが、法律が施行される以前は、「麻」=「大麻」でした。

人々はその繊維を「たいま」と呼び、身を清めると言われる神事用の大麻を特に「おおぬさ」と呼んでいたそうです。しかし残念なことに、現在本来の麻である「大麻」は「指定外繊維」。衣服の表示としては、「指定外繊維大麻○○%」もしくは「指定外繊維ヘンプ○○%」となっており、なかなか手に入らないのが現状のようです。

楽しみながら、自分で糸作りから始めることで、この世に1つしかない素敵な作品が出来上がります。皆さんも挑戦してみてはいかがですか?

大麻博物館
http://www.nasu-net.or.jp/~taimahak/
栃木県那須郡那須町高久乙1-5

ナチュラルセラピーSHOP  アンジェリ
http://www.salon-angeli.com/

 

TEXT:宮崎法子