映画「カルテット!人生のオペラハウス」~さぁ、クライマックスはこれから~

老いって何だ? そこにあるのは今だけ!

みなさんは、”老いる”、ということを、どのように考えていますか? フケる? シワだらけになる? ボケる?……(笑)。

この物語は、その主人公たちの「今」のように、ゆっくりと、おだやかに、奏でられていく。大きくハデな事件など起こるはずもない。そこには、仲間と、食事と、音楽、があるだけ!

みなさんは考えてみたことがありますか? 誰にでも「死」は平等にやってくる。けれども実は、「老い」を享受できるのは限られた人間だけ、であると。若い時期、それは”現役時代”と呼べるものだけれど、そこにはいつも、細かく、大きく、地味に、派手に、さまざまな出来事や事件が起こっている。

それらは自分自身が原因となることもあるだろうし、他者からの否応もない、理不尽な裏切りであったりもすることだろう。「なんでいつもこんな大変な思いをしないとならないの?」「どうしてラクをしたらいけないの?」。そう思わされる場面だって、きっと少なからずあるはずだ。

だがしかし。”老い”とはそれらを超えたところにある。この映画の主人公たちは、すでにそれまでの人生のどこかの場面で、真剣に戦い、必死に生き抜いてきたのだ。それこそ、幸せいっぱいあふれる出来事も、行き詰まり絶望に打ちひしがれる出来事も、すべてすべて乗り越えて、”老い”という彼らの「今」がある。

 

「人生は楽しむもの」を教えてくれる

しかし……。
人生のさまざまなピークを乗り越えて、”老い”を享受している「人生の主人公たちはみな、言いたい放題!やりたい放題!(笑)。そんな時、われわれ現役世代にとって、とても参考になるシーンがあったのでご紹介しよう。朝食のテーブルで、朝っぱらから平気で’下ネタ発言’をする入居者に、それを投げかけられた若いメイドはこう返す。「Qui’ est-ce-que c’est ?」 (仏語・ケスクセ?意訳・なぁに?なにが言いたいの?)と、カワイイ笑顔で微笑みかえし、彼にお気に入りのジャムを手渡すのだ。

そんな彼女を、彼らはきっと大好きになるし、チップ(おこづかい)もはずんでくれるにちがいない!だって、彼らにとって、このたった一言が、人生の大きな潤いになるのだから!

幼い子供だって、老いた先輩たちだって、みんなみんな、いつだって主人公だ。だから、歌う。だから、音楽を奏でる。だから、誰かを、なにかを、愛するのだ。ピアノを奏でるシワだらけの手。歌うときに口許にできる、何重ものホウレイ線。後悔しない人生なんてない。だからみな、後悔しないように生きるのだ。

迷ったら歌おう!音楽を奏でよう!音楽とは、人間だけに許された、アダムとイヴのリンゴなのだから。ダスティン・ホフマン監督デビュー作であり、オペラによる音楽たちがたっぷり詰まったこの作品。そして、このストーリーは、作曲家ヴェルディによる傑作オペラ、「リゴレット」第3幕、「美しい恋の乙女よ」が、ベースになり、リンクしていることに、あなたは気付くだろうか……? さぁ、みんなで歌おう! さぁ、みんなで心を奏でよう!

精一杯の愛と感謝と、ほんの少しのスパイスをこめて。
人生はいつも「ここ」にある。

 

 

『カルテット!人生のオペラハウス』
4月19日(金)より TOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマ 他 全国順次公開
配給:ギャガ
監督:ダスティン・ホフマン、脚本:ロナルド・ハーウッド<アカデミー賞受賞脚本家>「戦場のピアニスト」「潜水服は蝶の夢を見る」、音楽:ダリオ・マリアネッリ<アカデミー賞受賞作曲家>、出演:マギー・スミス<2度のアカデミー賞受賞>、トム・コートネイ<アカデミー賞ノミネート>、ビリー・コノリー<英国アカデミー賞ノミネート>、ポーリーン・コリンズ<アカデミー賞ノミネート>、マイケル・ガンボン<英国アカデミー賞受賞>
(c) Headline Pictures (Quartet) Limited and the British Broadcasting Corporation 2012公式サイト http://quartet.gaga.ne.jp

★バック記事を見る→映画情報