一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.2時空を超えて、魂の進化を説く映画『クラウド アトラス』

一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.2時空を超えて、魂の進化を説く映画『クラウド アトラス』

過去・現在・未来。時空もジャンルも超えた混沌ストーリー

最初これは何の話だ? と戸惑う。
登場人物が何者か分かる前にまったく違う話になり、また新たな話が始まるのだ。それがいくつか続き、次第にいくつかの時代への生まれ変わりの話が交錯しているのだと分かってきたら、やっと物語の中へ入っていくことができて、俄然面白くなってくる。

舞台は19世紀から24世紀。過去・現在・未来という時間の流れの中で500年の間に6つのエピソードが展開する。それは人間ドラマ、近未来SF、ラブ・ストーリー、アクション、ミステリー……とまるで一度に6本の映画を撮っちゃったような渾身ぶりで、観せられるこちらもあまりの壮大さに圧倒されるは、呆れるは、満腹するは、頭が下がるは、唖然状態。でも、ものすごくシビレマシタ。
久々に映画を観終わってふわふわ足が浮くような、異世界を探検してきたような気分で家路をたどれた。そう、私は間違いなく駅まではペ・ドゥナになってましたね(笑)。

話は、ザックリーという24世紀に生きる老人が子供たちに自分の人生を語るところから始まる。彼は1849年の前世では邪悪な医師だったが、1936年のスコットランドでは安ホテルの強欲な支配人。1973年のサンフランシスコでは会社の不正を告発する発電所の社員……と生まれ変わるたびにだんだんと善良な人間になっていた。また、彼を巡る人々もそれぞれの輪廻転生を同時にくりかえしていく……というもの。

私がこの映画で一番感動したのはラブ・ストーリー部分。近未来SFのパートで、遺伝子操作された複製種ソンミと革命軍の兵士との時空を超えた愛には、そのロマンチックさとソンミを演じる韓国人女優ペ・ドゥナの演技に大興奮。胸が熱くなりました。
驚いたのは、ペ・ドゥナがどアップで大粒の涙を流すたびに、この映画が「韓国映画」になったことだ。それは凄いことだと思う。そうさせるペ・ドゥナという女優の情緒、個性も凄いと思うが、それこそ「役者」だという気もした。日本人の役者でそんな人いる? いないよね。

私は常々韓国の俳優が流す涙はまるで水晶かガラスのように綺麗で、なんであんなに美しく泣けるんだろう? と不思議に思っていたが、あの涙は韓国の特産品だったのだと本作で悟った。

とにかく、彼女の涙はまるで「愛」が瞳から零れ落ちるようにハッとさせられる美しさがあり、胸を打つのである。このシーンはこの映画の中でも白眉で、強く印象に残る。だから観終わって私のようにぺ・ドゥナになる女性は少なくないのではないかと思う(笑)。
もうひとつ、音楽家(男)とその恋人(男)との時空を越えた愛も切なくて節度があって良かった。

人間は何度でもやり直しがきくということを教えてくれる

さてこの映画をスピリチュアル的視点で観ると、たとえ前世で過ちを繰り返しても、魂は学び磨かれ、良い人間へと生まれ変わろうとする。何回でもやり直しが効くんだ、という希望が提示されている部分が素晴らしいと思う。
壮大な輪廻転生をかくも観せられると、自分の前世を思い、楽しくもなってくる。私もいろいろな前世があるが、いずれも今生の私と似た人生を送っているようだ。また、今生では前世の教訓を生かし、変わろうともしている。より良く変わっていきたいと思う。

「俳優が演じる役は、その俳優が前世で送った人生さ」と、ピーター・セラーズが言っていたけれど、本作では最高で6役をトム・ハンクス始め、メインの役者が演じわける。ラストクレジットで「えっあれあの役者だったの? 分かんなかった」と驚かされる。髪の色、目の色、肌の色を変えられるとほとんど分からない。まして特殊メイク全開、コスプレ全開なのでどれだけ分かるかを試すのも面白いだろう。

ちなみに、監督のウォシャウスキー兄弟なのだが、姉弟になっていたので、? と思っていたら、なんと兄のラリー・ウォシャウスキーが性転換してラナ・ウォシャウスキーになってて仰天。これが意外に美人なんです。いやはや。

 

監督・脚本/ウャシャウスキー姉弟、トム・ティクヴァ 原作/デイヴィッド・ミッチェル 出演/トム・ハンクス、ハル・ベリー、ジム・ブロードベンド、ヒューゴ・ウィービング、ジム・スタージェス、ペ・ドゥナ、ベン・ウィショー
3月15日(金)~全国ロードショー
■ (C)2012 Warner Bros. Entertainment. All rights reserved.

 

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