神仏絵師のよろづ話:第九話「わずか42文字:最短のお経「延命十句観音経」

お経を唱えたい人にオススメ「延命十句観音経」

こんにちわ。神仏絵師の昌克です。みなさんは、どんなお経を唱えてますか? ここで「はい! ○○○経です」と答えられる方は、まず少ないと思います。でも「唱えてみたいな〜」と思ってる方も少なくないと思います。そこで登場するのが「延命十句観音経」です。この記事のタイトルにもあるように、数あるお経の中でも、最も短いため、江戸時代にブームが起きて以来、今でもとても親しまれているお経です。そして、これがその全文です。

観世音 南無仏(かんぜおん なむぶつ)
与仏有因 与仏有縁(よぶつういん よぶつうえん)
仏法僧縁 常楽我浄(ぶっぽうそうえん じょうらくがじょう)
朝念観世音 暮念観世音(ちょうねんかんぜおん ぼねんかんぜおん)
念念従心起 念念不離心(ねんねんじゅうしんき ねんねんふりしん)

ね! 短いでしょ? これなら、なんとなく覚えられそうじゃありませんか? そして、これが現代語訳したものです。ただし、いろんな訳し方があるので、これが正解とは言えませんけどね。

私は、観世音菩薩に帰依します
私たちには、仏さまと同じ因があり、仏さまと縁でつながっています
仏さまとの縁によって、私たちは常に心を清らかにし、幸せに過ごせます
私は、朝にも夕べにも観世音菩薩を念じます
この心のままに、観音さまと離れません。

そもそも、この観音経が広まった理由は、もちろんその短さにあると思うのですが、このお経と唱えたら、こんな奇跡が起きた!という逸話がたくさんあるのです。千回唱えたら、治るはずのない病気が治った。戦に敗れた将が処刑から免れたなど、この観音経にまつわる奇跡は各地で残されています。しかしながら、この観音経の人気が広がった江戸時代に、事件が起こります。「このお経は、偽物だ!」声をあげたのは、なんと、お坊さんたちでした。実は、この「延命十句観音経」、中国で流行したのがはじまりなのですが、そもそも原典(サンスクリット語で残されている原本みたいなもの)には、載っていないので「偽経」と呼ばれていました。日本に渡っても、そのことが問題になってたのです。そしてとうとう、このお経が大ピンチになったのです。

延命十句観音経のピンチを救った禅僧・白隠(はくいん)

そこで登場したのが、当時とても有名だった禅僧・白隠(はくいん)さんでした。この白隠さん、この観音経を徹底的に研究し、いろんな話を聞いてまわりました。そして、すでに庶民の間に広まり、様々なご利益を生んでるという事実を認めて言いました。「たとえ、誰が作ろうとも、実際に多くの人を助けているのだから、大いに信心しなさい!」と。
さらに当時は、まだ「十句観音経」と呼ばれていたものに「延命」の二文字を加え、「延命十句観音経」としました。このことは、「延命十句観音経霊験記」にあわらされ、一気に世の中に普及したのです。有名なお坊さんにお墨付きをもらったって感じですね。

今回は、いつもの作品紹介と違って、お札を用意しました。下の写真をクリックしてプリントしてください。A4サイズで二枚のお札が作れます。点線に沿って切っていただき、二つ折りにするとカード類と同じ大きさになりますのでで、ぜひお財布などに入れて、時々唱えてみてくださいね。奇跡が起こるかも!

 

★プリント用はコチラ

<Information>
「Japanism Art Exhibition ~鶯語花舞~」
2013年3月19日(火)~24日(日)
会場: The Artcomplex Center of Tokyo 2F ACT3(新宿区)
http://www.gallerycomplex.com/c/jae6/index.html

「第2回 神仏画展」開催予定!
7月11日(木)〜16日(火)
会場:吉祥寺第一ホテル1F ギャラリーK
http://www1.parkcity.ne.jp/am/shinbutsugaten/2013/