宮崎ますみさん連載 第5回 執着を手放すこと

宮崎ますみさん連載 第5回 執着を手放すこと

 

まだハワイに住んでいる頃、小学1年生だった長男はマクドナルドのおまけで付いてくる映画“Finding Nimo”のおもちゃにハマった。

通常ジャンクフードは食べさせない主義でしたが、この時ばかりは毎週おもちゃが変わる度に1つだけ買ってきました。確か1カ月半程度でそのシリーズは終わったと思うのですが、最終週はいよいよ待ちに待った息子が一番欲しかった悪役のシャークのおもちゃでした。胸を弾ませながら街のマクドナルドへいつものおもちゃ付きのハンバーガーを買いに行くと、なんとおもちゃがもう品切れで付けられないと言うのです。息子はたいそう落胆しました。その落ち込み方といったら半端ではありませんでした。ショックすぎて喋れなくなってしまったのです。1カ月半待って待って待ちぬいた一番欲しかったおもちゃが、手に入らないのですから。

夜になって、ようやく息子は口を開きました。
「マミー、どうして神さまはボクにシャークを与えてくれなかったの?」
その複雑な目は私から納得がいく答えを求めていました。
「光ちゃん、これはレッスンだよ。神さまはあなたに執着心を抱いた末に訪れる苦しみを教えてくれたの」
「じゃあなんで、こんな気持ちになる前に先に教えてくれなかったんだ?」
「経験しなければ、本当にその気持ちがどんなものか知ることはできなかったはずよ。執着心を手放しなさい……」
息子はまだ納得ができないように、とぼとぼ自室へ戻っていきました。

それから1か月後、夏休みを利用して日本から私の姉と長男と同じ年の姪子が遊びに来ました。姉にはこの出来事は一切話していませんでした。けれど姉が持ってきた日本土産の中に、なんと息子が欲しかったマクドナルドのおもちゃ“シャーク”が入っていたのです。息子と私はびっくりして目を合わせました。姉は単に、娘は好きでないキャラクターだったからと、持って来てくれたのでした。

「ほらっ、こうちゃん!執着を手放すと神さまは与えてくれるのよ」
この出来事は、息子にとっても私にとっても、大切なことを学ばせていただけた出来事でした。

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