クスリのしくみ~ステロイド薬の副作用はなぜ起きる?

ステロイド薬は、ムーンフェイスや野牛肩、骨粗鬆症など副作用が多いことで有名なクスリですが、炎症を抑える目的でお医者さんから処方されることが多いのもまた事実です。「ステロイド = 怖いクスリ」のイメージが定着していますが、その仕組みとなるとピンとこない方も多いのではないでしょうか?そこで、今回は「炎症を抑えるステロイド」の仕組みについてお話させていただきます。

炎症を抑えるステロイドは本来体内で生成される物質で、代表的なものとしてコルチゾールが挙げられます。この物質は、脳から分泌されるホルモンの刺激によって副腎という臓器の外側から分泌されます。薬として一般的に使用されるのは、このコルチゾールに似た形のもので抗炎症作用を増強し合成されたものです。

ステロイド薬は、タンパク質の代謝に作用する働きを持ち、身体を構成するタンパク質の合成を抑制し、分解を促進させる方向に作用します。そのため、筋肉の萎縮や骨粗鬆症を発症することがあります。また、脂質代謝では脂肪分解を促進し、体脂肪の分布を変え、肩や顔、お腹などに脂肪沈着が多くなり、手足の脂肪は少なくなるというアンバランス状態が起こることがあります。よく耳にするムーンフェイスや野牛肩は、このような過程の結果表れる副作用です。

また、「ステロイド薬は急に止めないでください」という注意も有名ですが、これは、薬と脳と副腎との密接な関係に由来するものです。コルチゾールが分泌される仕組みは前述しましたが、反対にストップさせる仕組みはどうなっているのでしょうか?ステロイド薬が血液中に多量に存在すると脳はこれを感知し、コルチゾールの分泌を抑制するよう副腎に働きかけます。ところが、突然ステロイド薬がなくなると脳も副腎も驚いてしまい、体がパニックを起こしてしまいます。そこで、ステロイドを止める際にはゆっくりと時間をかけて弱いものに切り替えていくという手法がとられています。

クスリのしくみを知ることは、病院に行ったときにお医者さんとより深い内容の相談をするために有効なものと考え、できるだけ簡単に記述してみました。「クスリのしくみ」を知ることによって「身体のしくみ」が見えてくるのもまた興味深いものです。