<ご縁>というと、「ずっとつながっている」というイメージがあるかもしれません。家族とか友達とか同僚とかサークルメンバーとか。確かに、できるだけ長期にわたって親しい間柄でいられるにこしたことはありません。できれば、仕事でも恋愛でも趣味でも、そういう<ご縁>をつないでいってくれたら嬉しいです。

ただ、<ご縁>で忘れてはならないのは「一期一会」という概念です。これは、千利休という有名な人がいますが、この方の茶道の流派の言葉だそうです。ちょっとしたトリビアみたいで興味深いと思うので、覚えておくと、なんとなくカッコいいかもしれません。

この言葉の意味ですが、簡単に説明すると「僕たちの<ご縁>はこの瞬間に終わってしまうかもしれない。もう二度と会うことができなくなるかもしれないのだから、今この瞬間を大切にし、最大限のおもてなしの心で接しようよ」という意味です。とてもすばらしいことばですよね。

よく趣味を聞かれることがあるのですが、僕は散歩と答えています。そう答えると、「なんだ。無趣味ってことですね」とか「人と関わるのが嫌いなんですね」とか、あれこれ言われることもあるのですが、決してそんなことはありません。

と、僕の個人的な話はどうでも良いとして、今回は散歩から<ご縁>について考えてみたいと思います。
散歩といえば、何をイメージしますか。足腰を鍛えるために歩く。脳を活性化させるために、自己啓発テープや覚えたい事をMP3で繰り返し聞きながら歩く。こんなイメージでしょうか。

それもとても素晴らしいのですが、たまにそういう人を見ると時間に追われて生きているのかな、と切ない気持ちになることがあります。僕自身も、たまにそういうことしますけどね。
散歩は、気分転換や健康増進などのため、もしくは好奇心を満たすために深く考えず気楽に細かいゴール設定をせずに歩くこと、と思ってください。蛇足ですが、当てもなく彷徨い歩くことではありません。それは徘徊と言います。

好奇心にフォーカスしてくれると、ありがたいのですが、散歩をしていると色々な物が視界に入ってきます。すれ違う人、街路樹、草花や雑草、空、建物……もちろん、視覚的な物だけではなく、風の音、誰かの話し声、車が通りすぎる音、土の匂い、誰かが料理をしている匂い。こういうのを楽しむ風情が散歩の醍醐味です。

<ご縁>は、人間だけに該当する言葉ではありません。僕たちは<ご縁>があって地球に生まれました。
<ご縁>があってこの国に生まれました。いくら時代が進んで情報社会になろうとも、誰かがコントロールした情報だけではなく、自分の周囲の環境そのものとの<ご縁>を意識することも、とても大切なのです。

少し散歩の話から脱線しますが、昔は、あちこちにノラネコやノラ犬がいました。今は、彼らは人間に見つかると保健所行きにされてしまいます。それが良いか悪いかは別として、そういう時代になってしまいました。

もしかしたら、あなたも子供の頃、ノラネコやノラ犬と遊んだ記憶があるかもしれません。僕は臆病者だったので、犬が怖くて怯えていたタイプですが、今となっては、ノラ犬と遊んだりできた人って羨ましいなって思います。

管理された<ご縁>ではなく、それこそ自然の<ご縁>ですよね。それこそ一期一会だと思います。そういった想い出が、後々、大切な財産になると思います。

今の時代は隣人の顔も名前も知らない人も多いですが、人間に限らず季節ごとの植物にもまったく意識しない人も増えています。春に桜が咲いても、誰かに言われなければ気づかない。秋に紅葉になっても気付かない。なんだか、そういうのって、とても悲しいですよね。

わざわざ時間をつくってじっくりと自然観察しろと言っているわけではなく、ちょっと気にかけてあげると、自然の美しさが僕たちに癒しを与えてくれます。癒しを与えてくれる<ご縁>なんて、想像しただけでありがたい気持ちになれますよね。
僕たちは目の前の<ご縁>に気づかないことが本当に増えてきました。しかし本来、広い意味で言えば、僕たちは様々なあらゆる<ご縁>でつながっているとも言えるのかもしれません。

たまに散歩をしていると、ベビーカーに乗った赤ちゃんが微笑んでくれたりしませんか。
小さな子どもがすれ違いざまに挨拶してくれたりしませんか。
そこで、立ち止まって世間話をするまでに至らずとも、そこには清々しい素敵な時間が共有できませんか。
知らないおばちゃんに話しかけられたり、そういう<ご縁>もありますよね。顔も名前も知らなくても、その時、一瞬だけでも確かに<ご縁>がつながっているんですね。

イケメンの男性以外とは知り合っても意味が無いとか、ビジネスチャンスにならない人脈はつくっても意味がないとか、散歩なんかするくらいならスポーツジムで合理的に体を鍛えた方が良いとか、世の中にはいろいろな人がいますが、心豊かに生きられる<ご縁>を、一人でも多くの人たちが意識してくれたら、世界はきっと、もっともっと輝いて素敵な物になると思います。
見落としている<ご縁>を探しに、ちょっとだけで良いので散歩してみませんか？

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