今なお愛される「一寸法師」「浦島太郎」の世界~「お伽草子−この国は物語にあふれている−」展

(クレジット)
藤袋草子絵巻(部分)
一巻
16世紀
サントリー美術館蔵
Fujibukuro-no-sōshi emaki
Handscroll
16th century
Suntory Museum of Art
2986 × 980 pixel (JPEG形式 /2.0MB)

 

室町時代から江戸時代初期にかけて作られ、幅広い読者層に愛読された短編小説〈お伽草子〉は、題材の面白さや奇抜さを持ち味に、多彩な物語世界を繰り広げています。
現存400種類を超える作品の中には、一寸法師・浦島太郎・酒呑童子など、今でもよく知られる物語が多い。本展では、絵巻を中心とした優品の数々によって、お伽草子ならびにお伽草子絵の魅力を紹介。お伽草子の物語世界、そして描き出された当時の人々の息吹や内包された世相、中世の人々の豊かな想像力を心ゆくまで楽しむことができます。
お伽草子は絵巻や絵本などでも親しまれ、その素朴でユーモラスな絵もまた魅力の一つとなっています。

お伽草子が流行した室町時代は、度重なる戦乱によって政治史的にも文化史的にも変革を遂げた時期でした。時代は新しい物語を求め、平安時代からの貴族の恋愛物語などに加えて、それまでの物語世界では脇役であった、僧侶や庶民を主人公にすえた多種多彩な物語を生み出しました。

また、主人公の多様化は、物語の作者や享受者、画風の変化とも深く関係しています。お伽草子ならびにお伽草子絵は、社会の変革の投影、すなわち、文化の創造を担う新たな階層の台頭を伝える一現象ととらえることができます。

本展では、絵巻を中心とした優品の数々によって、お伽草子ならびにお伽草子絵の魅力をご紹介します。お伽草子の物語世界、そして描き出された当時の人々の息吹や内包された世相、中世の人々の豊かな想像力を心ゆくまでお楽しみください。

《 展示構成 》

1.昔むかし ― お伽草子の源流へ

平安時代に始まる物語文学は、鎌倉時代を経て、やがて公家の衰微にともなって衰えていきました。この現象は絵巻制作においても同様で、絵巻の全盛期は鎌倉時代であったとされます。当時の絵巻の大半は寺社縁起や高僧伝記などの宗教絵巻であり、情趣的な物語文学を内容とするものは多くありませんでした。そのような中、鎌倉時代末期になると、題材・表現ともに貴族文学とは全く異なる物語が現れます。これが、お伽草子ならびにお伽草子絵の萌芽です。本章では、14・15世紀絵巻の優品によって、お伽草子の源流へと時をさかのぼります。

2.武士の台頭 ―「酒呑童子」を中心に

平安時代から鎌倉時代まで、物語文学を享受する者の多くは貴族であり、物語の主人公もほとんどが貴族でした。しかし鎌倉時代末期になると、武士が登場する物語が多く生み出されます。お伽草子の、いわゆる〈武家物〉の代表作ともいえる「酒呑童子」の成立期は早く、南北朝時代にさかのぼります。本章では、源頼光たちの武力によって鬼神・酒呑童子を征伐する「酒呑童子」を例に、政治的メッセージが色濃い物語をご紹介します。

(クレジット)
酒伝童子絵巻(下巻 部分)
狩野元信筆
三巻
大永2年(1522)
サントリー美術館蔵
Shuten-dōji emaki (The Tale of the Drunken Ogre)
Kanō Motonobu
Set of three handscrolls
1522
Suntory Museum of Art
2977 × 791 pixel (JPEG形式 /2.0MB)

 

3.お伽草子と下剋上

鎌倉時代から武家階層が台頭し政治経済の実権を握るに及んで、文化もまた社会的・地域的に発展しました。戦国の動乱はそれに拍車をかけ、文芸の世界においても質の変化と多様化をもたらしました。そのような現象を端的に見せてくれるのが、お伽草子です。本章では、「下剋上」という語に示される、この時代の精神や風潮を背景に、物語の主人公・享受者層・画風の変容の跡をたどり、お伽草子とその絵画を文化的所産として見つめ直します。

(クレジット)
浦島絵巻(部分)
一巻
16世紀
日本民藝館蔵
Urashima emaki
Handscroll
16th century
The Japan Folk Crafts Museum
4360 × 2030 pixel (JPEG形式 /3.0MB)

 

4.お伽草子と〈場〉 ― すれ違う物語・行きかう主人公

お伽草子は、時代設定が曖昧な一方で、物語の舞台として特定の場所が示されることが少なくありません。なかでも清水寺が登場するお伽草子はその数40篇を超え、現存するお伽草子作品の約一割を占めています。ではなぜお伽草子には清水寺に関する作品が多いのでしょうか。本章では清水寺を例に、物語が生み出され鑑賞される、その背景と信仰を探ります。

5.学芸と想像 ― 異界への関心

お伽草子の特徴の一つは、鳥獣魚虫・草木・器物など、人間以外が主人公となる作品が多く見られることです。いわゆる〈異類物〉の初期作例は、学芸に秀でた公家が創造したといわれ、異界を舞台にした物語には、彼らの、人間界には拘泥しない自由な想像の広がりを見てとることができます。本章では、お伽草子の中でも特に異類物に示される、中世の人々の学芸の繁栄・深化の様相に迫ります。

 

「お伽草子 この国は物語にあふれている ―」展 開催
▼会期 : 2012年9月19日(水)~11月4日(日)
▼主催    : サントリー美術館、読売新聞社
▼協賛    : 三井不動産、三井住友海上火災保険、三和プリンティング、サントリーホールディングス
▼会場    : サントリー美術館
港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3階
最寄り駅 : 都営地下鉄大江戸線六本木駅出口8より直結
東京メトロ日比谷線六本木駅より地下通路にて直結
東京メトロ千代田線乃木坂駅出口3より徒歩約3分

【基本情報】
▼開館時間 :  10時~18時 ※金・土、および10月7日(日)は20時まで開館
※いずれも入館は閉館の30分前まで
※shop×cafeは無休
※開館情報は今後の状況により変更する場合があります。最新情報は当館ホームページをご覧ください。
▼休館日 : 火曜日
▼入館料 : 一般1,300円、大学・高校生1,000円、中学生以下無料
▼前 売 : 一般1,100円、大学・高校生800円
サントリー美術館、チケットぴあ、ローソンチケット、セブンイレブン、イープラスにて取扱
▼一般お問い合わせ:03-3479-8600
▼ホームページ:http://suntory.jp/SMA/

※会期中展示替えがございます