セドナから愛をこめて「アイル・グラハムの光日記」 第2回

今年はアガベの当たり年。あちらこちらで鮮明な赤と黄色の花を咲かせている。セドナに住んでいて、こんなに一度に咲いているのを見るのは初めてだ。このアガベを見ていると人の一生とだぶってくる。

 

アガベは60年から100年に一度だけ花を咲かせてそして枯れる。枯れた後、自分のまわりに咲いている子どもアガベの栄養分となる。花が咲くころになると、数週間のうちにいっきに幹を伸ばす。その幹にはアスパラガスのような節ができるので、それは天国に向かって高く伸びた梯子にも見える……。短時間で伸びる幹のなかは繊維質で空洞となっているため笛などに最適な材料となり、この幹からアメリカンフルートやディジュリデゥがつくられる。とても軽くて持ち運びに便利なので旅好きな音楽家の間で密かな人気だ。葉からは、お酒のテキーラや甘味料のアガベシロップがつくられる。テキーラを飲むと身体中に元気がみなぎる気がするのは、長い間花を咲かせるために蓄えているエネルギーの作用もあるのだろうか……。

 

アガベシロップはセドナ住人の間で大人気。身体にやさしいこの甘味料はコーヒーや紅茶に、そして、ケーキづくりや料理にと何にでも重宝する。

セドナにはNew Frontier というオーガニックスーパーがメインストリート89A沿いにある。そのスーパーにアガベシロップが3~4種類置いてあるので好きなものを選べる。日本に持ち帰る場合は、ラップなどで蓋をきっちりと巻いてからパッキングすると漏れ防止になって良い。同じスーパーに、アガベの葉からできたボディーブラシも売っている。セドナの健康志向の人たちは、このボディーブラシで毎朝皮膚を軽くこすってマッサージをしている。ブラシは乾燥させたままの状態で使う。朝の目覚めの時にすると身体の新陳代謝がよくなり、とても気持ちの良い1日を始めることができる。

 

ハイキングに出かけるとこのアガベをあちらこちらで見かける。アガベには別名というかあだ名がある。1世紀に一回だけ花を咲かせるので、「センチュリープラント」そして、「インディアン・キラー」。アガベの葉の先が針の様に硬くてとがっている為この様な名前がついたのだろう。

 

 

 

ネイティブアメリカンたちは、このアガベの葉の先を針にして、葉の繊維を糸にして縫物をした。またアガベの葉を土の中に入れて蒸し焼きにして食べた。ちなみに生で食べると毒性があるそうなので食べないでくださいね。以前、ネイティブアメリカンのシャーマンとセドナの森を歩いているとき、アガベの葉を1枚剥いでそれを細かく裂いて、口でなめし三つ網に編んで私の腕にお守りとして結んでくれたことがあった。ネイティブアメリカンにとっては、アガベは食べ物であり裁縫道具であり、お守りなのだ。きっともっともっと素敵な使い方があるのだろう……。

 

夏のセドナの日中は、生卵を置いていたら半熟になってしまうくらいに暑い。早朝とか夕方はいくらか涼しいので、ハイキングに行くとしたら、朝は10時くらいまで、午後は4時くらいからがお勧め。それ以外の日中は、ホテルでゆっくりと過ごすかショッピング、または水遊びが良い。セドナには小川があるので、水着になって、時には水のなかに入り、時には木陰で読書などという過ごし方が夏ならではの過ごし方。私は夏になると「みそぎだ~~」といってしょっちゅうあちらこちらの小川に出没している。その時は必ず頭のてっぺんまでつかる。そうするとスカーッ!と何かが抜けていくのがわかる。爽快きわまりない。夏にセドナにいらっしゃる方は、スーツケースのなかに水着をお忘れなく!「禊(みそぎ)」をぜひお試しあれっ!

 

セドナにははっきりとした四季があり、いつ訪れてもそのときならではのスペシャルな体験ができる。「今だっ!」と思ったその時が自分の訪れるタイミングとなる。

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