身近な薬草でセルフケア「人と薬草のあいだの決め事」PART.2

薬草は人口密度にも敏感に反応します。 蓬(よもぎ)や杉菜はとても強くてまた奉仕の精神に溢れていますが、かぼそい薬草たちはあまりに多くの人間が近くに住むとひっそりと姿を消してしまいます。 現在50代の人たちが子供のころに近辺でみていた女郎花(おみなえし: 秋の七草のひとつ)や美肌によい井戸草(ゆきのした: その名のとおり井戸のまわりなど湿ったところに生える)などは現在は数が減りもっと田舎にいかないと見られなくなっています。 また伐採のために作業員が里山にはいったとき、そこに毎年生えていた希少種の野草がその年はこつ然と消えたこともありました。 このように薬草は人との微妙な距離をもって生えています。

里山でなくても、一般住宅の庭にある花が咲くなら、その家の人にとって必要だから咲きます。 その土地に生えたものは「自然に」生えているのではなく、その土地の人との関わりのうえで種が開き花が咲いたものです。 縁に土足で入り込むようにして摘んでも、薬草は効果を発揮しないでしょう。 もちろん誰も関知していない空き地や裏山もあるでしょう。 自分が欲しいという気持ちだけで動くのではなく、その土地とそれをケアしている人、そして自分の位置を見極め、「奪う」のではなく「頂く」気持ちが必要です。

また友人や知り合いを通じてやってくるものに注意してみてください。 あなたが良い縁をつむぐことに心をかけていれば、そのすてきな縁にのって薬草はあなたの元にやってきてくれます。 また逆もしかりです。 良い縁を通じて、あなたの庭に生えた薬草が日本中のお友達に広がって役に立つことでしょう。 薬草はそんなふうに人の手を通して私たちの役に立つのが大好きです。 工場で一気に熱を加えて乾燥させられたティーバッグの薬草茶よりも、人の縁を通して手間暇かけて自然に乾燥させたもののほうが深い味をしており、また断然薬効が優れています。

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