脳神経外科医師が答える「心」の真理。「幸せ」の見つけ方

11月30日に発売したTrinity45号。皆さんご覧になっていただけましたか? P.20の「ストレスに克つ“心の免疫力”」では、免疫力と心の関係について、各専門の先生にお話をお伺いしました。人生の浮き沈み、節目に立ち合うことが多い医師。心とは?幸せとは? 阿部メディカルクリニック院長の阿部聡先生よる深淵なメッセージをお届けします。

『単純な人間に対して、森羅万象は複雑
心なんて、永遠に分からないでしょう』

―心とは何でしょうか?

“心”といっても、知識か、記憶か、どこを指して心と言うのか。ずっと昔から哲学者たちもいろんなことを言っているけれど、心とは何か分からないですよね。

人間の神経細胞は150億個しかなくて、それに対して森羅万象はものすごく大きい。
たとえば人が相手の顔を見て話している時も、背景にあるものなど相手以外の情報はカットしているのです。150億個の細胞に全ての情報が入ってきたら、脳が処理できずパンクする。人間の能力として不要な情報はカットするようにできているのです。

たとえば人間が「手」をつくるとマジックハンドみたいな単純なものになってしまうけれど、我々の手は余計な筋肉がたくさんついていて複雑ですよね。

自然というものはとても複雑だけれど、人間は150億個の神経細胞しかないから、複雑な森羅万象のことは理解も表現もできない。小さい存在から大きい存在は分からない。だから、心という概念は永遠に分からないということになります。

宇宙人がいるとして、我々よりもっと進化した大きい存在がいれば分かるかもね。我々がペットの犬や猫を見て、何を欲しがっているかが分かるのと同じですね。彼らのほうが、神経細胞が人間より少ないのでなんとなくわかるってわけ。

『幸せに王道なし。最期の瞬間まで生き抜いて』

―心が明るいと、免疫力は上がるのでしょうか?

物事にはポジティブもネガティブも、喜びも悲しみもなく、人がどう受け取るかだけです。良い悪いはその人のなかの判断基準でしかありません。ネガティブに考えて物事を疑いながら大金持ちになるかもしれないし、ポジティブになって赤信号で渡ったら車にはねられるかもしれない。すべては自分のなかにしかなく、物事を受け入れどう生きていくかということ。つまり、自立が必要ということです。

ただ、これまで何千、何万億人の150億個の細胞が、何千年にも渡って経験し考えた結果、“明るくなったほうが、生きやすいらしい”という経験法則があるだけ。

自分が前向きか後ろ向きなのか、言い換えればどういうエネルギーかは、自身の友達を見れば分かります。自分と同じレベルやエネルギーの人しか集まらないものです。そこから上に行きたいのか、行きたくないのかが問題。今のレベルをクリアしたくなければ、そのまま行けばいいでしょう。けれど人生は有限だから、死ぬ直前に気づいたら取り返しがつきませんよ。どうせならエネルギーを高める方向のほうがいいですよね。そうはいっても、神の愛は残酷で、善人も悪人も分け隔てなく皆同じように死んでいくんだけれどね。ただ、その瞬間までは、前向きに自分らしく生き抜けということでしょうね。

たとえ病気でも、体が不自由だとしても、活き活きとしてる方もいっぱいいらっしゃいます。逆に健康で何一つ不自由もないのに、人生に不満やるかたない人も多くいます。
まず生きて生き抜けていられることこそ、幸せであると肝に銘じてください。それこそが自立への第一歩です。
自立することで、幸せであると感じる頻度が多くなります。
これが僕の知る範囲での幸せへの近道です。

<Profile>

阿部聡先生
阿部メディカルクリニック院長。医学博士、脳神経外科専門医、臨床心理士、日本医師会指定産業医、国土交通省指定航空身体検査医。専門は、脳神経外科(脳血管障害、脳神経超音波学)、心療内科(催眠、交流分析、ゲシュタルトセラピー、家族療法)。著書に『イライラ脳の人たち』(光文社)『愛されて幸せになる「恋愛脳」のつくり方』(大和書房)『日本人は150グラム大きい脳で考える』小松成美氏共著(PHP)ほか

阿部メディカルクリニック http://amc.ms/info1/