僧職系男子ブームが起こっている理由とは?

「お坊さんブームが来ている」、と感じている方も多いことでしょう。

僧職系男子という言葉が登場しているくらい、今まさに注目されています。僧侶の写真集「美坊主図鑑」は1万部を超える大ヒット。どうしてこうしたムーブメントが起きているのでしょうか。

私が思うに、東日本大震災以降、自分の生き方を見つめていきたいと思う人がぐんと増えたということが、ひとつの大きな理由である気がします。多様な生き方が許されつつある日本。それゆえに選択肢を両手に抱えて悩んでしまうことも増えたのではないでしょうか。

「女性は結婚したら家庭に入り子どもを産む」という価値観が薄れ、いかようにも暮らせる豊かな社会に、私たちは身を置いています。それ自体は喜ばしいことなのですが、たとえば自分の親の価値観と自分自身の価値観との違いで苦しんだり、自由に生きられる世になったとはいえ、今もうっすら残っている昔からの男女観で裁かれてつらい想いをすることもあることでしょう。こうしたはざまで毎日を過ごしていた人にとって、大きな自然災害というのは自らを再考するきっかけになったと思います。「このまま、なんとなく生きていていいのだろうか」と。

そんな時、お坊さんの言葉や仏教の教えというのは、生き方について考えるためのよい手がかりになります。そもそも、たとえば「断捨離」ブームに見られるシンプルな暮らし方や、ベジタリアン・ヴィーガンなど自然の恵みを食すスタイル、地球の環境に配慮したエコ・オーガニックな生き方などは、どれも古くからお坊さんが実行してきたこと。姿かたちを変えて、仏門に入っていない方々も、お坊さんの生き方の一部に興味を持ち、実行してきました。大きな震災の後、日々繰り返される余震に心を痛めながらあらためて自分が生きていることのありがたさを感じた時、ふと彼らの存在や生き方に触れたくなるような気がします。

このブームの背景には、お坊さんからの情報発信が増えたということも挙げられるでしょう。最近はフリーペーパーを発行している方々もいます。たとえば、「フリースタイルな僧侶たち」というプロジェクトチーム。浄土宗僧侶の池口龍法さんが代表を務めており、「フリースタイルな僧侶たちのフリーマガジン」を隔月で発行しています。京都を中心に、関西や東京の一部にフリーペーパーを手に取れるラックが設置されています。また、電子書籍としても発行しているので、世界中の人が自由に閲覧することができます。内容はとても充実しており、僧侶の生き方や活動についてのインタビュー記事や、僧侶によるイベントの紹介、コラムや精進料理レシピなど、読み応えがあります。このような、時流に乗ったあたらしい試みを取り入れる若いお坊さんが増えており、彼らの生の声を聴く機会をより多く持てるようになってきていることも、現在の「僧職系男子」ブームの理由となっていることでしょう。

個人的な話になりますが、私は最近、小池龍之介さんの著書にはまっています。「考えない練習」はバイブル的存在になりつつあります。自分の中身をシンプルにすることで見える世界もシンプルになる、ということを丁寧に教えてくれる一冊です。ぜひこちらもご一読を。

まあ、こうして私なりに色々と書いてみましたが、歴史は繰り返されると言いますから、日本のこれまでの歴史から考えればこのブームについても単純に「過去の流れが繰り返されているだけ」なのかもしれませんね。ここまで書いてみて、ふとそう思っちゃいました。

「フリースタイルな僧侶たち」フリーペーパー 電子版」