ブータンしあわせ便り第14稿~「せ」~「殺生」

ブータンは日本でいえばもうそろそろ秋です。
ブータンでは少し早く8月、9月がマツタケがよく取れる月。今頃、道端で農家のおじさんが販売する朝どりマツタケが並んでいるだろうな…。

さて、ブータンの食事といえば、仏教国ということで、殺生をしないんじゃない?という質問が多く寄せられますが、実はブータン人はよくお肉を食べます。

ヤク(ウシ科の哺乳類)の肉を干し、家の中につるしている光景はどこでも見られます。
首都でもお肉屋さんやお魚屋さんがあります。入ってみると、アジアの町のお肉屋さん、お魚屋さんとはあまり違いはありません。

けれど信条としてブータン人は殺生を好みません。ですからお肉屋さんやお魚屋さんなどのお店はネパールやインドからの出稼ぎや移民の方が経営しています。

日常の食卓にはサラダのような生野菜は並びません。日本のドレッシングを持っていくととても喜ばれました。
普段は野菜の煮たもの、カレー(インドの影響)、お肉の煮込み、トウガラシ(生も煮込んだものも)そして白米が並ぶのが一般家庭の料理です。トウガラシなどは前菜のように生で塩をつけながらポリポリまるでスナックのようにいただきます。

トウガラシがないととてもさみしいとみんな言います。

このお肉を食べる習慣、お坊さんまでもがあまりにお肉を食べすぎて、私が滞在していた頃、「僧侶はお肉禁止令」まで出るほど、ブータン人はお肉を食べます。

ホームステイ先の僧侶が、今日はいいの~とお肉を食べる姿は…ちょっと不思議でした。
もちろん敬虔な仏教徒の方はベジタリアンですが、ベジタリアンはあまり多くなく、私もベジタリアンということでホームステイ中は自炊しなければならないほど、外食の際はお肉を抜いてくださいとお願いしなければならないほど、お肉の混ざらないお料理は少なく、困ったことが多かったです。

しかし校長先生などがベジタリアンで敬虔な仏教徒だとすると、学校などの掲示板に

第一条:お肉をたべるべからず・・・食べた者は○○になる
第二条:にんにくを食べるべからず・・・食べた者は△△になる
第三条:たまごを食べるべからず・・・食べた者は□□になる

なんて張り紙がされている学校もあったりします。

野菜などは輸入のものも多いのですが、田舎で作られているものは無農薬のものが本当に多く、大きく、とても新鮮です。農薬をまいてないから虫が・・・なんてことは一度もありませんでした。みんな虫食いもないきれいな野菜です。

田舎の農家などでは飼っている牛などを家族でと殺し、食し、逆に命というものに感謝するというようなことが今でも行われていますが、首都ではほとんど見られません。

ブータン人は普段白米を食べます。ブータンに行くと、日本人はお米も食べるし、食事が合うのでは?ということですが、ブータンの食事はなんといっても、インドの影響と、高山にあるということで寒さをしのぐため辛い辛いトウガラシやバターをたくさんお料理に入れてしまうので・・・食事の合わなさが日本人のツーリストの悩み第一位だそうです。

この殺生を嫌うということは食生活にはあまり関係のないようですが、虫などの生き物を殺さないという点では、かなり多くの人がそれを守っているように感じました。

たとえば夏の暑い日に虫がたくさん家にはいってきても、ほうきで追い払う…そういうことがほとんどです。

これはどんな虫に対しても同じで、ですから自然と台所にもあの嫌な虫が普通に這っている…なんてことは日常です。私はもちろん殺生をしないので、虫も殺しませんが、ブータンは本当に動植物が多いので、虫も多い! ちょっとドアを開けていると100匹をゆうに超えるぐらいの虫が入ってきてしまいます。そしてそれらの大きさは半端じゃありません! 追い出してもらっても、またどこからか入ってくるので、布団をかぶって、おびえながら寝たことも多々ありました。

この虫の多さを避けるため、ブータン人は高所へ高所へと移動したといわれています。ということは、やっぱり虫は殺さないんですね!
殺虫剤が海外から輸入されましたが、一般家庭ではまだ見かけたことがありません。

野犬が本当に町中にいるブータンですが、もちろん保健所などはありません。
以前、野犬の数に困り果て、処分できない信条をもつブータン政府がインドの国境付近に犬を捨てるということを試みました。結局犬は賢い!みんな、また元に戻ってきたよ~と政府関係者が笑っていましたが、処分したくないから、インドの近くに捨てちゃおう!なんてことが本当にブータンでは起こっています。まるで物語のようなほんとうのお話です。


カフェのランチ。ツナなども輸入されています

餃子に似たおかずはおもてなし料理です。



スープカレーです。赤いものはトウガラシ。たっぷり入れます。