あなたならばどう送る? 『さよならのブーケ~大切な人の最期にしてあげたい11の物語』

本書では、葬儀会社を経営する冨安徳久氏とそのスタッフの11のエピソードが語られています。 葬儀は、故人を送るという目的はもちろんありますが、富安氏らの目線は常に遺された人々に向けられています。 故人と遺された人の間には、「愛情」はもちろん、簡単には片付けられない感情もたくさんあります。 葬儀の意味は、その感情を明らかにし、整理すること。 最愛の夫を亡くし悲しみに混乱する人、事情があって疎遠だった親の死を事務的に処理しようとする人、長い闘病の末に亡くなった親の死を安堵の気持ちで受け止める人。宗教的な面や、親族の気持ちで考えれば、葬儀は故人を送るためのもの。しかし、冨安氏らがケアするのは、遺族の感情です。 生前の故人と遺族の関係性はどのようなものだったのか。死によって明らかになるのは、故人と遺族の関係性。 愛情だけで繋がっている関係も勿論ありますが、それだけではなく嫌悪や怨みの感情だけの関係性も確かにあることも事実です。 「死」ごとに多種多様な関係性があるなかで、葬儀にどのような目的を持たせ、遺族が感情を整理してこれからも続く現実を過ごしていくかが、大切なのかもしれません。 数えきれないほどの死を見てきた冨安氏。 冨安氏の目線を通して感じたのは、大切な人の葬儀を経験するその前に、まずは命がある今を大切にしなければいけないということです。 でも、「後悔のない人生はない」と言い切るその言葉は、きっと真実だろうと思います。 かけがえのない人を亡くした時、通夜、火葬、葬儀までの一連の儀式が行われるわずか一週間ほどの時間のなかで、その死を受け入れ悲しみから抜け出すことなど、到底難しいこと。更なる悲しみは、大体その後に押し寄せてきます。 そこで多くの人が抱えるのが、後悔の気持ちなのかもしれません。 「あの人ともう少し一緒の時間をとれたのではないか」、「もっとしてあげられることがあったのではないか」。 大切な人を亡くした人ならば誰もがこんな後悔を抱くはず。その後悔を少しでも減らすための、故人の為にできる最後の恩返しが、葬儀なのかもしれません。 自分ならば大切な人をどう送り、そして自分の最後はどう送られたいか。 そう考えたことは結果的に、自分が今どう生きたいかにつながったような気がします。 『さよならのブーケ~大切な人の最期にしてあげたい11の物語』 冨安徳久 編著 かんき出版 2012年5月21日発売 1,365円(税込