大峯千日回峰行満行者 柳澤眞悟師「行じて見えた、現代を生きる智恵」PART.4

Trinity42号にご登場いただいた柳澤眞悟師は、吉野・金峯山寺の歴史のなかで、大峯千日回峰行を戦後初めて満行された大阿闍梨様です。本誌ではご紹介しきれなかったインタビューをお届けします。

※大峯千日回峰行とは…奈良県・吉野山の金峯山寺蔵王堂から大峯山上ヶ岳(標高1719メートル)にある山上蔵王堂までの山道を、往復48キロ、山上蔵王堂の戸開期間中143日の間、1日も休まず歩き続け、8年かけて満行する行のこと。

『神仏の絶大なるお力が働かないと、いかなるお願い事も叶わないのです』

― 欲望やお金とは、どのように付き合っていけば良いか、アドバイスをいただけますでしょうか。

柳澤師:「仏教的にいいますと、お金でも物でも、結局神様からいただくものという考え方なので、いただけるものはありがたい。でもいただけないものを無理にいただく必要はないという教えがあります」

― 自分から得ようとしないほうが良いのでしょうか。

柳澤師:「そうですね。あまり深いことを自分自身では考えないのですけど、私もお金に困ったこともないし、またお金を儲けようと思ったこともないので。今は、ありがたいことに生活だけはできますので、あまりお金というものを考えたことがないのです。お金があっても物がなくなったらどうするんだということになりますが、たとえば電気でもそうですよね。いくらお金があったって電気がなければ、使い放題にはできないですから。ガソリンも高級車を持っていても、ガソリンがなければどうしようもないですよね。だからそういう状況になった時に、どうするかです。私は無責任のようですが、なった時はなった時だなと。本当は困るでしょう、燃料も電気もなくなれば。たぶん飢え死にするような人もでてくるし、世の中パニックになって凄い困ると思いますが、でもなった時はなった時で、なってみないと分からないという」

― お若い頃からそのようなお考えをお持ちなのでしょうか。

柳澤師「これは最近ですよ。ただし、頭を剃っている以上は、自分だけが助かろうとは思ったらいけないなと思っています。そういう状況になった時に、自分がご飯を食べなくても、食べられない人に譲らないといけないと思うし。今はそんなことがないから、自分も食べていますけど。しょうがないというか、どんなことがあるか分からないので、それだけは今から覚悟しておこうと思うのです」

― 柳澤先生にのもとには、護摩焚きのご依頼が寄せられるそうですね。

柳澤師「そんなにたくさんではないですよ。私は金峯山寺の方に長い間おりましたから、そういう繋がりで、知り合いの人が祈祷してくれとか、護摩を焚いてくれというのがあるんです。成就院で護摩を焚くのも去年の3月から。それまでは金峯山寺の脳天大神龍王院 におりましたが、そこを出て、自分の護摩を焚く場所をつくったわけです」

― 祈りを捧げると、物事が良くなっていくのはどういうことなのでしょうか。

柳澤師:「護摩というのは、お願い事を叶えてくれるように思われますが、本来違うのです。護摩というのは、火によって煩悩を燃やして清浄になると自然と開運するんですよ。煩悩が邪魔になっているんです。実際のお願い事は、家内安全、病気平癒、身体健康等いろいろですが、神仏の絶大なるお力が働かないと、いかなるお願い事も叶わないのです」

PART.5へ続く

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PART.2
PART.3 


■プロフィール

柳澤眞悟(やなぎさわしんご)
昭和23年長野県茅野市にて生まれる。25歳で吉野山金峯山寺に入寺。35歳で「大峯千日回峰行」を戦後初めて満行。大峯千日回峰とは、奈良県・吉野山の金峯山寺蔵王堂から大峯山上ヶ岳(標高1719メートル)にある山上蔵王堂までの山道を、往復48キロ、山上蔵王堂の戸開期間中143日を1日も休まず歩き続け、8年かけて満行する行のこと。昭和59年には、断食・断水・不眠・不臥を9日間続ける「堂入」(四無の行ともいわれる)を満行。平成元年、笙の窟百日籠山行を満行。その後、寺内において2度の百日籠山行を満行。平成22年に権大僧正。現在は金峯山寺副住職、金峯山修験本宗「成就院」住職を務める。

■information
世界遺産 金峯山寺 国宝仁王門 大修理勧進
秘仏本尊特別ご開帳
蔵王堂ご本尊、日本最大の秘仏金剛蔵王大権現3体(重要文化財)を拝観できます。
2012年3月31日(土)~6月7日(木)まで
http://www.kinpusen.or.jp/event/2012-gokaityou.pdf

金峯山寺 http://www.kinpusen.or.jp/